森里海から「あののぉ」
第22回
うるか(鱁鮧、潤香、湿香)
「うるか」というものにはじめて出合ったのは、かれこれ20年近く前のこと。島根県の柿木村というところで行われた「森里海連環学 かきのき村塾」に参加したとき、ある人に勧められてお土産に購入したのが始まりでした。
これが珍味好きにはたまらないおいしさで、一瞬にしてファンになったのです。瓶詰めのラベルにはこう記してありました。「高津川の清流に育った天然鮎の『はらわた』を塩だけで、じっくりねかせました。苦み・渋み・旨味の三拍子揃った『本物のうるか』を是非ご賞味下さい。(天然うるかですので砂の混入があります。)」後日知ることになるのですが、日本でも一、二を争うおいしさと言われる高津川の天然鮎、その鮎を使ったうるかはまさに絶品でありました。
「うるか」とは鮎の塩辛のことで、内臓でつくるものを「苦うるか」、新鮮な身でつくるものを「身うるか」、落ち鮎の真子・白子でつくるものを「子うるか」と呼ぶようです。なかでも本来の「うるか」は「苦うるか」でなんとも言えない通好みの風味を醸し出します。
鮎は生息する川によって味がかなり異なる魚だと思います。全国の鮎を食べ歩いたわけではありませんが、いくつかの代表的な鮎を現地で食した感想です。天然鮎と放流鮎でも味はもちろん異なりますが、同じ天然鮎でも川によってその味は異なるように思います。うるかも同様に、地域(河川)によって味が異なりますし、製法も様々です。うるかファンとして、いくつかのうるかを食しましたが、今のところ高津川のものを超えるうるかは現れておりません。まだまだたくさんのうるかが日本にはあると思います。新たな出合いを楽しみにしたいですね。
鮎が美味しい川ほどその自然度は高く、清流と言えると思います。うるかは自然度のバロメーターでもあるのです。日本の食文化の多様性・奥深さの一つの象徴としての「うるか」。これからもずっと、それぞれの地域の河川流域に有り続けてほしいと願います。
※ 本連載は、菅組が発行する季刊誌『あののぉ』で著者が連載している内容を転載しています。