移住できるかな
第9回
お陽さま争奪戦
移住地さがしも長くなると、珍しいルートから情報が舞い込むことがあります。今回は伝言ゲームのように、太陽光発電の会社に辿り着きました。正直言うと、それまで太陽光発電会社は敵でした。近年とくに国の補助金を得て、どんどん陽当たりのいい南斜面を専横しているからです。
田舎道を走っていると唐突に、ずらり整列するソーラーパネルに出くわすことが多々あります。再生可能エネルギー。建物の壁や屋根に載せるぶんには土地は不要ですが、中山間地域では休耕田や森林を伐採して設置されます。
私が辿り着いた太陽光発電会社では、そうした予定地の一部を手放すとのこと。なんと、ありがたい話でしょう! 私にとっても地域の人々にとっても喜ばしい話だと思います。
冬晴れのある日、スーパーの駐車場で待ち合わせてE町の七カ所を見物します。あらかじめ用意してくれた地図資料を片手に、丘の上の茶畑、橋脚を見上げる川沿い、もと蜜柑畑だった竹薮……なかなか非凡なラインナップです。感心するのは、すべてさんさんと陽光の降り注ぐ南斜面の土地で、一見は荒れ果てていても揚水小屋があるなど、暮らすための必要条件は抑えています。さすが土地さがしのプロ、頼もしい限りです。このどこかにきっと私の新天地があるはず、と期待に胸踊ります。
七カ所の一つ、山麓に拓かれた小さな集落の一隅に、公園のような土地がありました。平らにして草を刈り、山桜を植え、大樹の下にベンチが据えられています。きっと、この集落の憩いの場です。片隅にある納屋の壁には、クワやカマが整然と掛けられており、この土地を長いあいだ丹精してきた、その方の努力を読み取ることができます。ところが残念なことに、その方(おじいちゃんだそう)が亡くなり売却されるとのこと。
なんと素敵な公園でしょう。この大樹を伐り倒して、家を建てる気にはなれません。集落に、こんな素敵な場所を作ったおじいちゃんに、会ってみたかったなぁ〜。
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巡った七カ所の一つに、山の果樹園がありました。なだらかで低い山が大中小、とんとんとんと行儀よく並んでいます。紹介された果樹園は、小のところ。大中はすでに伐採され、一面にソーラーパネルが並んでいます。そのソーラーパネルに囲まれて、小さな一軒家が見えます。聞けば十年以上前に遠方から移住してきた家族とのこと。森林の中の一軒家が、ある日突然、禿げ山の一軒家になったのです。お気の毒すぎる……やはり太陽光発電会社は敵でしょうか。