農と食をダイレクトに繋ぐことで生まれる
ノーティス(気づき)の取り組み
今津亮 いまづ・りょう
Vol.3 自分で畑をやってみる、日本の暮らしが変わる
農業技術、物流網が発達した現代は新鮮な野菜が年中食べられるようになりました。その反面、本当の旬や美味しさはわかりにくくなったといえるかもしれません。今津さんは野菜は時期が一つの価値だと語ります。
畑を案内してくださる今津亮さん。
「桜前線と同じように、野菜の収穫時期も南から北へ、あるいは北から南へと移っていきます。その地域の本当の旬とは関係なく、長い期間スーパーに野菜を並べることができるのはそのためです。逆にいうと、他の地域で穫れない時期に穫れる野菜は高値を付けることができるわけです。例えば、ジャガイモは北海道と九州にしか産地がありませんが、ちょうどその間にある浜松で収穫できれば、穫れない時期の穴を埋めることができるわけです。ジャガイモが三方原の特産である理由の一つです」

夏野菜と旨みたっぷりの出汁でつくったカレー。
「半ば強制的に生長を促進させる栽培方法は、野菜本来が持つ力を削いでしまうことになり、細胞や繊維の密度が粗く、結果的に腐りやすい野菜になってしまうんです。野菜が本当に美味しい時期というのは思ったより短くて、例えば、ほうれん草だと本当に美味しいのは浜松では1/2~28くらいの間だけなんです」
レタスがこれでもかと入ったサンドウィッチ。
ナスとエスプレッソのアイスケーキ。
環境そのものである農業に過度にマーケティング原理が入り込んだ結果が現代農業の歪みの一因になっていることが想像できます。今津さんは、多くの人が野菜づくりに触れることが農業と食を変えていく原動力になると訴えます。
「ご家庭に日当たりのあるちょっとしたスペースがあれば、ぜひご自分で畑をやってみてください。ご家族が食べる分であれば、まずは一坪程度の大きさで十分です。ただ、夏からはじめないほうがいいかもしれません。夏は水やりや草取りなど、毎日やることがあって大変なので、途中で挫けてしまうかもしれません。手間が掛からない根菜類やブロッコリ、ホウレン草や小松菜など、冬野菜からはじめるのがおススメです」

オードブルもオーダーできる。
旬のものしかつくれないし、食べられない。家庭菜園だからこそ、純粋な農業のあり方が生きるのかもしれません。農は環境そのもの―。農や食への関心が高まれば、住まいや衣服にも気づくことが出てくるかもしれません。農と食から得られる気づきが、日本の暮らしをより豊かなものに変えていくきっかけになるのではないでしょうか。
旬のものをいただく、それが一番美味しい。家庭菜園の醍醐味。
おわり