びおの珠玉記事
第33回
太陽の誕生日・冬至
※リニューアルする前の住まいマガジンびおから珠玉記事を再掲載しました。
(2009年12月22日の過去記事より再掲載)
二十四節気の中でも知名度の高い「冬至」です。
冬になると、日が短くなりますね。
冬至は、一年の間で、一番日が短い日、とされています。
太陽が真南にきたときの高さを南中高度といいます。冬至には最も南中高度が低くなり、夏至にもっとも高くなります。
夏は日が長く、秋は日が短い、というのは、この南中高度の違いによるものです。秋から冬にかけて日が落ちるのがみるみる早くなる感覚を、「秋の日は釣瓶落とし」などと表現しますが、実際には冬至と夏至の間を周期的に繰り返しているのです。
図で見てもわかるように、南中高度が低くなると、太陽の出ている時間が短くなります。冬至に日が短くなるのは当然のことながら北半球だけ。また、日が一番短い日も、場所や年によってずれがありますが、今は12月22日頃を冬至としています。
太陽の力がもっとも弱くなる日
太陽は、古来人々の生活に密接にかかわってきました。
太陽は、その恵みから神と崇められることも多く、日本では天照大神(あまてらすおおみかみ)、ギリシャ神話のアポロン、エジプト神話のラーなど、世界各地で崇拝されてきました。
冬至は、太陽の力が最も弱まる日として、古くから知られてきました。
日が短く、草木は枯れ、生き物の姿を見ることも少なくなるため、死に一番近い日として、その厄を払うために「冬至」にかけて「湯治」をおこなったのが、ゆず湯のおこりだといわれています。
弱まった太陽は、この日から太陽がふたたび強くなっていくことから、「太陽の誕生日」と考えられ、その祝いも、日本だけでなく、世界各地で行われています。
クリスマスは冬至祭だった?
12月25日のクリスマスは、キリストの誕生日を祝う日として知られています。
しかし、実はキリストの誕生日はこの日ではないという説もあります。キリスト教においては、キリストが生まれたことよりも、死と、復活することに意味があると考えられておリ(復活祭が盛大に行われることからもわかります)、誕生日はもともとは重要な意味を持っていなかったといいます。
また、実際のキリストの誕生日は、1月、4月、9月、10月など諸説あり、12月25日だという根拠はありません。
ではなぜ12月25日がキリストの誕生日として知られるようになったのでしょうか。
12月25日がキリストの誕生日であると決まったのは、西暦325年。
当時、ローマでは太陽神を崇めるミトラ教が流行していました。12月25日は、冬至と同じように太陽が復活する日として祭りが行われていました。
定着していた冬至の祭りを、キリストの誕生日とすることでキリスト教の勢力拡大を行ったというわけです。
つまり、クリスマスの源流は太陽の死と復活を祝うことにあったということですね。
天岩戸も冬至の朝日?
日本の神話でも、太陽の神である天照大神が天岩戸に隠れ、世界が真っ暗になってしまい、また再び天照が現れ、世界が明るくなる、という記述があります。これは、日食を指すという説もありますが、冬至に太陽の力が弱まり、再びよみがえるということを指す、という解釈もあります。
このように、太陽は人々の関心をあつめ、また崇拝の対象になってきました。
冬の太陽
さて、冬はどのぐらい太陽の力が弱まるのでしょうか。
気象庁が発表している平年値分布図を見てみましょう。データは1971年から2000年の平年値です。
なお、日照時間とは、日照計で測定される直達日射量が120W/m2以上である時間とされています。雨や曇りなどで日が出ていない間はカウントされません。
(図は気象庁サイトより)
12月の月間日照時間
冬至のある12月は、太平洋側を中心に月100時間から200時間近い日照があることがわかります。一方で、日本海側は日照時間が少ないことがわかります。
6月
夏至のある6月です。日本海側と太平洋側に逆転が起きています。200時間〜300時間のところもあります。
8月
夏至は6月ですが、8月のほうが日照時間は長い地域が増えています。6月は雨により日照が少なくなる地域があるのが影響しています。
参考に、12月の月平均気温
北海道と、東日本の山間部では零下になっています。気温は高度や風などさまざまなものに影響されますので、日照時間とは一致していません。
こうしてみると、あらためて、日本は東西南北に長く、その気候も一様ではない、ということです。
今回は、趣向を変えて食べ物の話のない「旬」をお届けしました。
でも、食べ物の旬があるのも、気候に変化があるからと言えるでしょう。
冬至は、かぼちゃを食べてゆず湯に入る日、クリスマスはプレゼントをもらえる日、とだけ捉えるよりも、太陽が弱まり、復活することに感謝の気持ちを持ちながら、冬至を過ごしてみませんか。