フランスのアパルトマンのリノベーションとDIY

ところかわれば

森弘子

今回は、新年の一つ目の記事にふさわしく、新しくなった住まい、リノベーションした友人家族のフランスのアパルトマンの紹介です。友人家族は日本人のインテリアデザイナーの奥さんと、アーキテクトのフランス人の旦那さん、2歳と生後8ヶ月の女の子2人の4人家族と愛犬1匹。夫妻は二人とも30代前半の若い家族です。以前はパリ中心部に住んでいましたが、2人目の子どもが生まれ、住んでいた家が手狭になったことを主なきっかけに、旦那さんのおばあさまが暮らしていたパリ市内から電車で1時間かからないほどのところにある郊外のアパルトマンをリノベーションし、住むこととなりました。以前の記事「フランスにおけるDIY」でご紹介した通り、フランスではDIYはブリコラージュと呼ばれ、とても身近な存在です。例にもれず、さらにはご夫妻ともに設計に携わっているので、このリノベーションされたアパルトマンも、一部をご夫妻でDIYをされました。もちろん旦那さんは働きながら奥さんは育児をしながらのリノベーションでしたので、電気配線など専門的な部分や手間がかかる部分は大工さんにお願いし、週末などを使ってできる範囲でのDIYとなりました。

ところかわれば アパルトマン リノベーション DIY

リノベーション後のキッチンの様子。キッチンからリビング・ダイニングにいる子どもの様子がうかがえる。机もDIY、天板は自らやすりがけと塗装を行った。キッチンのカウンターの木板は最近ようやく取り付けられたとのこと。

アパルトマンの面積は約58㎡+バルコニー14㎡。エントランスとオープンキッチン、リビング・ダイニングと、それらとひとつづきになったベッドルーム、子ども部屋が一つとトイレ、シャワールームがあります。

今回のリノベーションでの一番大きな従前からの変更は、キッチンまわり。空間としてはキッチンの壁を一部取り払いより広く明るい空間に、そしてキッチンの設備も一新。DIYをした部分で一番大変だった部分もキッチンで、IKEAのキッチン設備をご夫妻自ら工事・設置。壁の取り壊しと電気配線と一部の塗装は大工さんにお願いし、他部分は週末を利用してDIYし、3週間程度でほぼ完成したそうです。リノベーション全体では、部分的に大工さんに来てもらったため、またご夫妻によるDIYは週末のみ可能だったため、断続的ではありましたが約5ヶ月で完成しました。

以前はリビングとは独立し閉じた一つの部屋だったキッチン。リビングとキッチンの壁の一部をカウンターの高さまで取り除き、キッチンをオープンキッチンへ変更したことで、明るく広い空間になりました。以前パリ市内に住んでいた家も、キッチンとリビングが壁で隔たれていて、子どもがリビングで遊んでいる様子をキッチンから見守れなかったので、今回のリノベーションでは家事をしながらいつでも子たちの様子を見られるようにしたかったということです。

ところかわれば アパルトマン リノベーション DIY

リノベーション前のリビングの様子。写真正面の壁の裏がキッチン。すでに一部の壁にはベージュ色の壁紙が剥がされ、白塗装がされている。正面右手のドアから、中央の壁紙が残る左端程度までの壁が変更された。フローリングは写真にある従前のものにやすりがけをし、染色した上で表面にコーティングを施し、黒に近い色味に変更された。

大工さんに依頼した箇所は、キッチン周りの電気配線が通っていた壁を取り除いたことで、一部配線し直す必要が出たため、トイレ前の廊下に下がり天井をつくりキッチン側等へ配線し直したことや、ベッドルームを区切るための袖壁の追加、フローリングのやすりがけ・染色・仕上げ、天井と一部の壁の塗装などです。逆に自らDIYした内容は、一部の塗装など細かい点が主ですが、一番大掛かりだったのはキッチン設備のインストール。IKEA製品を購入し、なんと自分たちで設置したそうです。これはなかなか大変!

ところかわれば アパルトマン リノベーション DIY

キッチン上部の棚に換気扇を取り付けている様子。キッチン設備はIKEA製で、配管も含めてご夫妻自らインストールした。

なお、フランスのアパルトマンのリノベーションでは、構造体にタッチしない限り、役所への申請は不要です。パリの店舗や共用部の変更の場合は申請が必要な場合が多く、特にファサードの色の変更や設備の変更で外観に変更がある際は、ほとんどの場合届出が必要です。また、アパートによっては管理組合にリノベーションの承認を得る必要がある場合もあり、古い建物の多いパリの築年数の長いアパルトマンでは途中階の部屋の壁を取り除いたりするのは嫌がられることが多いとのこと。逆に最上階であれば上階は屋根なので割と問題なく改修を承認されるとのこと。なお、フランスでは建物付きの建築家がいて、構造にタッチするような改修を行う際にはその建築家だけでなくさらに構造家が確認を行うこともあるようです。

ところかわれば アパルトマン リノベーション DIY

写真中央のクローゼットの後ろの壁が従前から追加した壁。この壁の設置には大工さんが協力。

ご家族が引っ越してからしばらく経っていますが、実はまだまだ小さなやりのこしている部分がいくつかあるそう。これまでにもトイレの壁の塗装やキッチンのカウンターの取り付けなど、このアパルトマンに移ってからも仕事と育児をしながら週末に少しずつ手を加えていっているそうです。そんなお父さんお母さんの姿を子どもたちが遊びながら横目で見ている風景。自らつくって直していく家で暮らしていくことは、より愛着を持ってものを長く大事に使う、最高の学びの場のように感じました。