Vol.48 家以上、店未満~etobun
Life style工房
福島市街地から西に20分ほど向かうと、りんごや梨の農園が点在するのどかな風景の中に、細長いプロポーションの石蔵がいくつも目につくようになる。建主家族の祖父もまた立派な石蔵を建て、長年丁寧に手をいれてきた。この地に住むことになった建主家族は、ここに家の新築を考えていたが、風景に馴染み、手入れの行き届いた石蔵や、増設された下屋のトラスも良く、すぐさま、改修することを提案した。
建主が新しい家に求めたものは、「家」というよりも、仕事場、アトリエ、書庫を内包する「場」だった。軒下、ぐるりと窓を回して見通しの良い台所、石に囲われたダイニング、そして2階の個室と、段階的にパブリックからプライベートへとグラデーションをつけた構成となっている。
建主夫妻は、この家に「etobun」という名を授けた。この家を、長男に加え4人目の家族として迎え入れるとともに、将来的には地域にとって何らかのコミュニティスペースとなってゆくよう願いがこめられている。人の家に行くよりもかしこまらず、地域の施設に行くよりも気軽に立ち寄れるようにと名付けられたこの場を、建主は「家以上、店未満」と呼び、どのような場にしていくか、楽しそうに画策している。
安齋好太郎
重厚だけれどどこか軽快な姿で、風景に馴染み年月を重ねてきた石蔵。「改修」という提案が、建主の驚きと喜びを生み、新たな生命が吹き込まれた
全体を、1階に水廻りのコアとダイニング、2階に寝室を設けるプランに。家として必要な機能を石蔵のなかに無理に収めず、下屋に空間を拡張し、台所を設けた
家の入口は、台所脇の引き戸。玄関らしい玄関がないことが、来訪者に訪れやすさを、また建主家族も、迎えやすい住まい方を実践している
玄関らしき引き戸から、ダイニングへ。思い出ある木製建具を引き込むと広がる、開く暮らしの場
トイレ・浴室などの水廻りがコンパクトに収められている木のボックスは、ダイニングには、書庫としての顔を見せる
ダイニング、下屋の台所、各々からステップアップする階段は、骨太にしてモダン。小さな踊り場を共有して、2階へと繋がる
2階のフリースペースから、ドアを入ると夫婦の寝室。左側には旗竿敷地のように、細長い空間も含め、奥へと続く子ども部屋
-
-
夫婦の寝室
-
-
子ども部屋