住まいのグラフィティ
Vol.49 「と」
ninkipen!一級建築士事務所
私たちの家である。
大阪府郊外の箕面市に位置するこの住宅街は、街開きから50年が過ぎて建て替えが進んでおり、更地になった私たちの敷地には紅白の梅、紅葉、百日紅、躑躅、五葉松、山茶花、棕櫚など多くの木々が健気に生い茂って残されていた。
まず初めに数十年そこに居続けたそれらを全て引き継いで残すことを決め、さらに新たな木々を植えて家をぐるりっと取り囲むことを考えた。道路側には混ぜ垣をつくり、隣地側にはベリーや石楠花、夏櫨など多くの樹種を増やして一年を通して変わり続ける緑の環を描いた。
次に、それらの木々との間をすり抜けるように、基礎から持ち出したスラブと軒庇による半屋外の回廊を家に巻きつけて庭との中間領域をつくり、内と外を緩やかに繋げた。さらに、既存の堀込車庫から庭に向かって三角形の階段室を増築し、道と回廊を繋げ、回遊性を増幅させた。
内部は1階南側をあえて掃き出し窓とせず、開口部を横長のプロポーションとして水平方向に押し広がる空間とするとともに、段差によって敢えて庭との距離を取り、軒下を余白として扱うことで、暮らしの中に静寂を求めた。リビングの天井伏はその下で振舞う行為との関係性を断ち、庭との連続性のみを考えて中央で切り替えている。
2階は左右対照の田の字型プランとし軸組に規律を与え、棟木の下に位置する壁と柱は全て真壁にして中心軸を可視化した。ロフト階は軒桁から上の欄間部分に壁を設けず開放し、天井全体を視覚的につなげて家に一体感をもたすこと試みている。
夏の間咲き続けた百日紅がいつの間にか散り、紅葉が色づき山茶花が咲き始める中、私たちの新たなステージがこの家から始まっている。
![ninkipen!びおソーラーの家の外観](https://bionet.jp/wp-content/uploads/2019/01/ninkipenimaduyasuo1.jpg)
道路側より。混ぜ垣をつくり、一年を通して変わり続ける緑の環を新たに描いた。
![ninkipen!今津康夫自邸のテラス](https://bionet.jp/wp-content/uploads/2019/01/ninkipenthouseterraceimaduyasuo.jpg)
庭との中間領域をつくり、内と外を緩やかに繋ぐ。
![ninkipen駐車場から庭へつながる上がる階段](https://bionet.jp/wp-content/uploads/2019/01/ninkipenhousegarage.jpg)
既存の堀込車庫から庭に向かって、三角形の階段室を増築。
![ninkipen庭へ広くつながるダイニング](https://bionet.jp/wp-content/uploads/2019/01/ninkipenhousedining.jpg)
1階内部。空間を水平方向に押し広げ、軒下を余白として扱うことで、暮らしに静寂を求めた。
![木製オリジナルキッチン](https://bionet.jp/wp-content/uploads/2019/01/ninkipenhousekitchin.jpg)
木製の棚から連続する伸びやかなオリジナルキッチン。
南の庭から北へと通り抜ける“緑の風”も心地よく。
![障子のあるリビング](https://bionet.jp/wp-content/uploads/2019/01/ninkipenhouseliving.jpg)
リビングの天井伏は、庭との連続性を考えて中央で切り替えている。
![横長の窓が開放的な2階の洗面所](https://bionet.jp/wp-content/uploads/2019/01/ninkipenhousebathroom.jpg)
2階。洗面越しに開かれた窓も、横長のプロポーションに。
![太陽熱で空気をあたため暖房・換気するびおソーラー搭載の屋根裏](https://bionet.jp/wp-content/uploads/2019/01/ninkipenhousebiosolor.jpg)
ロフト階は軒桁から上の欄間部分に壁を設けず開放。
正面にみえるのは、空気熱ソーラー「びおソーラー」のファンBOX。
![夜の闇の中、家の中が明るく照らされる家](https://bionet.jp/wp-content/uploads/2019/01/ninkipenhouse.jpg)
緑と風と太陽と~自然のリズムが日々の営みに溶け込む、新しいステージが始まったわが家。