ちいきのたより

Vol.53  水と暮らす町 玉島港町エリア
岡山県倉敷市 運船建設

私たちの運船建設がある倉敷市は、エリアによって様々な顔を持っています。
今回ご紹介するのは南側に位置する、玉島たましま港町エリア。

前回のレポートでも触れましたが、倉敷市の南側周辺の大部分は江戸時代に開拓された干拓地です。

玉島も同じように江戸時代に干拓地として拓かれ、千石船などが往来する商港として栄えました。

この江戸時代の名残を感じつつも、昭和高度経済成長期の雰囲気も同時に感じられる地域として、以前から‘レトロ商店街’として注目されており、映画『ALWAYS三丁目の夕日』のロケ地としても有名になりました。

それを象徴するのがアーケード商店街。
ALWAYS三丁目の夕日ロケ地レトロ商店街
昭和の時代にはたくさんの人でにぎわったアーケード商店街。今は一部のお店だけ営業しており、その多くはシャッターを閉めています。
ただし今でもかつての賑わいが蘇ってくるほど当時の雰囲気が残っており、タイムスリップしたかのような錯覚を覚えます。

そして玉島港町の中心的な存在である羽黒はぐろ神社
羽黒神社
玉島の干拓事業を行うにあたって、工事の安全を祈って建てられた神社。
他の場所とは違って一段高い所に建てられており、玉島の中心に鎮座する地元のシンボル的存在となっています。

その羽黒神社の参道入り口には、みなと湯という超レトロな銭湯があります。

みなと湯

外観だけでも昭和の雰囲気がたっぷり。残念ながら今は閉店となっています。

町中を歩けば各所で倉敷らしい伝統的な建物に出会うことができます。
伝統的な建物が並ぶ

倉敷独自の格子意匠である『倉敷格子
倉敷格子
上下に通る親竪子おやたてごの間に細い短い桟が3本入る意匠格子。
下部は外からの視線を遮る役目を果たし、上部からは採光をとる役割があります。

その他にも虫籠窓むしこまどやなまこ壁で装飾された江戸時代の商家の繁栄を感じます。
なまこ壁

地元の人が愛するソース『タテソース』。


実は倉敷でソースと言えば「タテソース」。盾のエンブレムがシンボルとなっており、味はやや辛め。
玉島の食堂や鉄板焼き屋ではこのタテソースを使っているところが多いので、訪れた時にはぜひ味わってみて下さい。

開店と同時に次から次へとお客さんがやってくるおはぎの有名店『やまと

おはぎやまと

やや小ぶりで食べやすく、1個60円とリーズナブルなおはぎはお土産に最適。
売っているのは「あんこ」と「きなこ」の2種類のみ。

このように江戸時代の伝統的なスタイルと、昭和レトロな雰囲気が入り混じる懐かしい風景を形成している玉島港町エリア。

しかし一方でよく町を探索してみると、単なるレトロ商店街というだけではなく、干拓地ならではの「水とともに生活する工夫」が随所に隠されている点も見逃せず、それが玉島の魅力的な空間を創出する要素となっています。

それを象徴とするのが全国的にも珍しいドラム缶橋。
倉敷市玉島の川にかかるドラム缶橋
100缶以上のドラム缶を使った珍しい浮橋。
この橋は昭和後期に作られ、当初は駐車場から商店街へとつながる観光客の動線の目的で作られたようですが、現在は住民の裏道的な役割として活用されています。

浮橋ながらもあまり揺れることはなく、しっかりとした安定感があります。
ドラム缶橋
このドラム缶橋は浮橋のため高さがなく、限りなく水面に近い位置で渡ることができます。そのため、まるで水面の上を歩いているかのような不思議な感覚になります。

ドラム缶橋から見渡す町並みも独特の雰囲気。
川に浮かんだように見える町の風景
小船が着くように水辺にせり出した建物はどこか異国のよう。

散策していると、町の中に海水が逆流するのを防ぐ巨大な水門が突如現れます。
玉島港町の水門
もともとは「ALWAYS三丁目の夕日」にも登場したコンクリートの味わい深い巨大な水門だったのですが、老朽化に伴い数年前に新しく建造されました。

水と密接な関係にある 倉敷市。
その恩恵を受けることもあれば、時には脅威的な存在ともなります。

2018年7月に襲った西日本豪雨から1年。
倉敷市真備町は特に大きな被害を受け、私達は水とどのように向き合っていくのかを考えさせられる一年でした。

今回玉島港町エリアを訪れて、水と暮らしてきた人々の生活を見ることで気づかされることも多く、また改めてじっくりと玉島を訪れてみたいと思いました。

SIN
ちいきの記者
SIN シン
大学で建築を学ぶも、ジーンズに魅せられて本場の倉敷に他県から移住。ジーンズメーカーで勤務したのち現在の会社へ。今はモノで埋もれた生活から解き放れるため、断捨離関連の本を買って知識を得つつも、逆に本が増えていくという悪循環に陥っている。

 

岡山県倉敷市運船建設施工事例
運船建設(株)うんせんけんせつ
岡山県倉敷市日吉町492-6
TEL:086-422-1143
URL: http://www.unsen.jp
1963年、ひとりの大工が倉敷にて創業してから約半世紀、地元密着型の工務店として家づくりを行っています。不用意に施工棟数を増やすことはせず、確実に仕事を遂行し、お客様と地域の皆様から愛される工務店を目指しています。
なお、社名からよく「船も造っているのですか?」と尋ねられることがありますが、造っているのは家のみです。

ちいきのびお参加工務店さん全国図

ちいきのびお