びおの珠玉記事
第76回
点字ブロック
(2012年10月03日の過去記事より再掲載)
街や駅を歩くとき、点字ブロックを意識していますか?
視覚障害のない方は、まず意識をしないで生活しているといってよいのではないでしょうか。
「点字ブロック」とは通称で、日本での正式名称は「視覚障害者誘導用ブロック」です。
実はこのブロックは日本で考案されたものです。1967年に、世界で初めて、岡山県で国道2号線に設置されました。
その後しばらくは普及が進みませんでしたが、陳情によって大阪市内の駅に設置され、そこから各自治体にも広がって行きました。
海外でも、日本のものとよく似た点字ブロックを目にすることがあります。日本発祥のこの点字ブロックが、世界で活躍しているかと思うと、嬉しい限りですね。
点字ブロックの役割と規格
点字ブロックの種類は2つです。
棒状の誘導ブロックは、進行方向を示します。
点が突起になっている警告ブロックは、誘導ブロックがまがる箇所や、交差点、行き止まりなど、この先に何かありますよ、ということを示します。
これらのブロックの規格は、かつてはとくに定めがなく、1967年の誕生から、さまざまなものが生まれましたが、現在ではJISで規格が定められています。
また、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー新法)」によって、多くの人が集まる駅や病院、主要な駅周辺の道路等に点字ブロックの設置等で安全を確保すること等が義務付けられています。
点字ブロックウォッチング
普段意識していない点字ブロックが、どんな風に使われているのか。点字ブロックウォッチに出かけました。
浜松駅にて。新幹線の切符売場には、点字ブロックでの誘導がありません。新幹線の切符は、タッチパネル式で、点字表示がないからでしょうか。隣の緑の窓口には、誘導がありました。
在来線の切符売場には誘導ブロックがあります。先には点字の駅名表示があります。
改札では、有人改札に誘導ブロックがあります。これとは別にある車椅子用の改札には点字ブロックはありません。車椅子と点字ブロックの相性はよくありません。このように、車椅子は自動改札に、視覚障害者は有人改札に、という誘導が好ましいのでしょう(有人改札にも、車椅子のマークはついていましたが)。
横断歩道。通常、点字ブロックは黄色等が選ばれます。全盲の方だけでなく、弱視の方にわかりやすくするための配慮です。しかしここは横断歩道上ゆえ、この色。
マンホールの蓋で途切れている例。これでは、「誘導・警告」のルールから外れているように見えます。綺麗に切り欠いて施工されていますが…。
こちらもマンホールで途切れている例。奥のマンホールのところで曲がっていますので、本来は警告ブロックがあるべきではないでしょうか。しかしマンホールの前後は誘導ブロックです。
こちらは、マンホールの上にもブロックを施工してある例。マンホールの上を通らざるをえない場合は、こうすべきなのでしょう。
この分岐と、右の警告ブロックは、よく意味がわかりません。左が新しそうなので、道が変わったのでしょうか。
一応やってあるけれど、の好例(?)。段差はあるし剥がれているしで、本来点字ブロックが何の役割を持っているかを考えれば、路面を含めて、極めてよくない状態です。
微妙に曲がっている道。警告ブロックを置いた上で、奥の誘導ブロックは少し右に曲がっています。建材の取り合い、施工手間や見た目にも関わりますので、直線で全部やってしまうケースもあるようですから、これは丁寧な例なのでしょう。
ちょっときわどい例。カフェの椅子に人が座ればおそらく点字ブロックにかかってしまいます。もっとも、人がいる、ということは、避けたり注意したりも出来る、ということです。簡単にどいてくれるものは、まあいいでしょう。
これもきわどい例。街頭演説中。こちらも、簡単にどいてもらえるでしょうけど、政治はこうした弱者の視点を忘れてはいけませんね…。
これは完全にアウトでしょう。そもそも歩道だし。
手前の2つならんだ誘導ブロックは、何をさしているのでしょう。もう一度おさらいをすると、直線のブロックが縦方向への誘導。点がならんでいるブロックは、曲がり角や階段、交差点など、何か変化がある、という警告です。これは意地悪の部類なのか…。向こう側にある、1.5ブロックほどの誘導ブロックも完全に意味不明です。
これもすごい例。完全に通れません。後から風よけを施工したのだと思いますが、点字ブロックには配慮が行き届かなかったようです。コーンとバーで何かを訴えている、のかな…?
何もここに停めなくても。点字ブロックに駐輪しないで、という注意のコーンのど真ん中に駐輪。コーン自体も邪魔になっています。しかし、そもそも、この点字ブロックも、どこに導きたいのか今一つ不明です。
最後の1枚を除いては、同じ日に、ほんのわずかな時間で見つかりました。みなさんの街では、いかがでしょうか。
手伝ってもらおう、手伝ってあげよう
「障がい者よ、街へ出よう」「網膜色素変性症」という、視力が奪われていき、やがて失明する病気にかかりながら、仕事を続け、街にも出かけ続けた方の著書があります。
3度もホームに転落した、という津久見さんは、それでも、障がいがあるからといって閉じこもること無く、街へでかけようと呼び掛けます。無自覚に視覚障害者を阻む人や物に悩まされながらも、さまざまな人に介助をしてもらいながら、街へ出かけます。
先の写真を見てもわかるように、やれといわれたからやった、というような点字ブロックだけでは、そうした気持ちに答えられるとはいえません。正しいブロックの設計・施工はもちろんですが、それは「手伝ってもらう」「手伝ってあげる」という関係を否定するものではありません。街に出て、点字ブロックを辿ってみればわかるように、それだけを頼りにいろいろな場所に移動するのは、おそらく相当困難です。
それでもなお、多くの視覚障害者は、点字ブロックの存在をありがたいと感じているのも、各種調査から見て取れます。せめて無意識に点字ブロックをふさがないこと。手伝ってあげられない人でも、そのぐらいは出来るはず。先の「バリアフリー新法」も、「心のバリアフリー」の促進をうたっています。実の所、これが簡単なようで難しい。気をつけよう、あることを意識さえしないバリアに。