びおの珠玉記事
第138回
とうもろこしを炭火で。
※リニューアルする前の住まいマガジンびおから珠玉記事を再掲載しました。
(2010/07/07の過去記事より再掲載)
朝採りのとうもろこし。
皮をむくと、ぎっしり詰まった、
ツヤツヤの黄色い粒。
それを、炭で焼いて食べる。
しかも塩味。
これ聞いただけで、
「うまそう!」と思うでしょう?
やってみました。
炭を熾す
まずは、炭を熾すことから始めます。
炭ですが、ホームセンター等に売っている炭は外材が多いです。
すべてとは言いませんが、外材の炭は違法伐採の可能性が拭いきれません。
国産材の炭を活用して、間伐材の利用を進めたい、ですね。
七輪の中で、着火剤などを使って火を起こします。
炭を入れ、炭に火が移るまで待ちます。
炭に火が移ったら、うちわで扇いで空気を送り、火種を安定させます。
火種が安定したら、炭を均等に広げ、30分ぐらい待ちます。
炭火焼きはかなりスローな調理方法。
熾火になるまで、火に気をつけながら読書でもしましょう。
とうもろこし豆知識
さて、熾火になるのを待っている間に、とうもろこしについてちょっと見てみましょう。
とうもろこしはイネ科の植物で、米・小麦とともに世界三大穀物のひとつとされ、世界の主要な食糧となっています。
他国では完熟してから収穫し、主に粉にして利用する「穀物」ですが、日本では未熟なものを食べ、甘みを楽しむ「野菜」です。
また、とうもろこしは家畜の飼料としても利用されています。
作物で、野菜・穀物・飼料の3つの顔を持っているのは、とうもろこしだけだといわれます。
<名前の由来>
さて、「とうもろこし」の名は、「唐(「舶来の」というほどの意)から来たもろこし(きび)」という意味です。とうもろこしが日本へ渡来した当時、最も似ている植物がきびであったためだとされます。
漢字では「玉蜀黍」と書きますが、これは中国語をそのまま当てたものです。
また、北海道や東北、北関東などでは「とうきび」、西日本では「なんばんきび」とも呼ばれます。全国には他にもいろいろな呼び方があります。
<原産地と来歴>
原産地は、メキシコから中央アメリカあたりという説が有力です。
ただ、祖先にあたる野生種は見つかっておらず、起源についてはっきりしたことは分かっていません。
栽培の歴史は米や小麦と同じくらい古く、7000年以上も前といわれています。早くから南北アメリカ大陸で重要な作物になっていました。
ヨーロッパへの伝播は、1492年にコロンブスが、キューバからスペインに持ち帰ったのが最初です。
最初は食べることが目的ではなく、絹糸(けんし。とうもろこしの雌しべ、いわゆるとうもろこしのヒゲ)の色がとてもきれい(美しいピンク色)だったので、それを観賞したのだそうです。
日本でも織田信長が絹糸を見て楽しんだのだとか。
日本へは、1579年(天正7年)にポルトガル人によって長崎に伝えられました。
栽培が盛んになったのは明治時代からです。明治初年にアメリカから新しい品種が導入され、栽培が盛んになりました。主に北海道で大量に栽培されました。
そして、第二次大戦後にスイート種の新品種がアメリカから導入され、未熟とうもろこし用の栽培が急増しました。
<とうもろこしの種類>
とうもろこしの品種はその特性により、主にデント種・フリント種・スイート種・ポップ種などに分けられます。
日本で野菜として食べられているとうもろこしは、「スイートコーン」と呼ばれるスイート種です。
・デント種(馬歯種、はつぶ種、デントコーン)
主に家畜の飼料として、またデンプン(コーンスターチ)などの工業原料として用いられます。
とうもろこしの中で最も栽培が多く、世界中に分布しています。
・フリント種(硬粒種、かたつぶ種、フリントコーン)
食用・家畜の飼料・工業原料として用いられます。
日本でも、昔は米のできない地方で主食として食べられていました。
メキシコ料理タコスの皮、トルティーヤにはこれを使います。
・スイート種(甘味種、あまつぶ種、スイートコーン)
主に未熟果を食用にします。生食用のほか、冷凍、ホールスタイル・クリームスタイルの缶詰、粉などに加工されます。また、残った茎葉は飼料用にされます。
スイート種には2つの型があります。
1つは、従来の普通型(普通型スイート種、スイートコーンともいう)です。
高糖型(スーパースイートコーン)が出るまで、よく食べられていました。札幌名物・大通りの焼きトウモロコシはこれでした。
もう1つは糖分の高い高糖型(高糖型スイート種、スーパースイートコーン、シュランケンコーンともいう)です。
高糖型は、近年、果実のように生で食べることができるので、「フルーツコーン」などと称されることもあります。
スーパースイート種の「ハニーバンタム」は、昭和40年代から全国で栽培されるようになりました。
その後、さらに甘い品種として、「ピーターコーン」を主とする、黄色と白の粒が混ざった「バイカラー(2色)コーン」が登場しました。
また、近年、「味来(みらい)」などさらに甘いモノカラー(黄色一色)の品種が育成され、注目を集めています。
なお、ベビーコーン(ヤングコーン)は多穂性のスイート種の幼果で、生長しはじめの若くて小さいうちに摘み取ったものです。
・ポップ種(爆裂種、はぜつぶ種、ポップコーン)
フリント種に近い種類。菓子のポップコーンは、この種類のとうもろこしでつくられます。
ポップ種は、硬質デンプンで包まれた粒の中にわずかに軟質デンプンがあり、種皮が硬く中心部だけが軟らかいのが特徴です。加熱するとこの軟らかい部分の水分が蒸発して膨張し、外側の硬い種皮がその圧力に耐えられなくなって破裂(爆裂、ポッピング)します。この特性を活かしたお菓子がポップコーンです。
他の種類のとうもろこしは、種皮が軟らかくて加熱しても破裂しないので、ポップコーンをつくることはできません。
その他、
・フラワー種(軟粒種、粉質種、こなつぶ種、フラワーコーン、ソフトコーン)
・ワキシー種(もち種、もちつぶ種、ワキシーコーン)
・ポッド種(有稃種、サヤトウモロコシ、ポッドコーン)
などがあります。
<とうもろこしの栄養と効能>
とうもろこしは野菜としては糖質が多く、高エネルギーです。
主成分は炭水化物ですが、たんぱく質、ビタミンB1、B2、E、食物繊維など、バランスよく栄養素が含まれているのが特徴です。
便秘の改善、大腸がんなどの予防、老化防止、疲労回復に効果的で、美肌効果も期待できるといわれます。
ただ、粒の皮にはセルロースを含み、消化があまりよくないので、よく噛んで食べるようにしましょう。
<遺伝子組み換え・バイオエタノールの問題>
現在、日本では、野菜として食べられている未成熟のとうもろこしは大部分が国内で生産されていますが、飼料用とうもろこし・食品加工用のとうもろこしは、需要のほとんどを外国産に頼っています。
輸入によって日本にも遺伝子組み換え品種が流入しており、これに対して賛否が起こっています。
飼料用として遺伝子組み換えのものが使われている、また、加工食品についても、よく「遺伝子組み換えでない」という表示を見ますが、(遺伝子組み換えでないことに一種の商品価値が生まれているため、)そう書かれていないものはほとんどが遺伝子組み換えのものを使っている、と考えてよいのではないでしょうか。
また、近年、とうもろこしはバイオエタノールへの利用で注目を集めています。
バイオエタノールは地球温暖化に対する関心が高まる中で代替燃料として注目されていますが、一方で食料との競合、環境破壊の可能性、代替エネルギーとしての適格性などの問題点も指摘されています。
炭火で塩焼き!
さて、炭もいい感じになってきたので、調理に戻りましょう!
おもむろにとうもろこしに塩をすりこんで、調理スタート。
塩をすりこんだとうもろこしを七輪の網の上に置いて、炭火で焼きます。
全体が焼けるように、時々とうもろこしを転がしつつ、焼いていきます。
そのうち、炭火のパチパチいう音に加え、ジュウジュウという音が聞こえてきました。辺りにいい匂いが漂います。
この音も、においも、おいしさを演出してくれます。
どんな味になるのか?!早く焼けないかな…うーん、楽しみです!
ふと気づくと、とうもろこしの表面がちょっと白くなっています。
どうやら、塩をすりこみすぎたようです…。これじゃあ、ちょっとしょっぱいかも。
この後、塩を少し払い落としました。
だんだん焼けてきました!
ワクワクしながらひっくり返します。
焦げ目がいい感じ。
どう?おいしそうでしょう?
焼けた!
焼けるなり食べる!
かじりつくと、香りと甘み、旨みが走ります。
うめぇ! こりゃうまい!
とうもろこしを2本焼くだけで1時間かかったけど、その価値ある逸品。
ウマさの秘訣は?
ウマさの秘訣は、おそらくとうもろこしの鮮度と炭火でしょう。
<とうもろこしは鮮度が命>
とうもろこしは「鍋を火にかけてから採りに行け」といわれるくらい、鮮度が命。
鮮度が勝負の野菜の中でも、とうもろこしは特に顕著です。
収穫後のとうもろこしは鮮度の低下が早く、甘みもどんどん失われていきます。半日で甘みが半減するといわれるほどです。
ですので、できれば採れたての新鮮なものを選び、すぐに調理したいところです。
皮やひげは、調理する直前に取るとよいようです。
<炭火で焼くと、おいしい>
炭火焼きって、何を焼いてもおいしいですよね。
なぜあんなにおいしく焼けるのでしょうか?
炭を熱すると、多量の遠赤外線が発生します。
これに対してガスは、同じ温度でも遠赤外線を出しにくい性質があります。
電磁波である遠赤外線は、遠赤外線を吸収しやすい物質に当たると、その物質の分子の振動を活発にさせる働きがあります。
分子が振動すると摩擦熱が発生し、これが熱源となります。
そのため食材の中まで加熱しやすく、また、電磁波なので表面から均一に加熱され、焼きむらがなく、こんがりと焼き上げることができます。
また、ガスや石油は水素を含んでいるので燃やすと水が出ますが、木炭は純粋な炭素なので燃えても水がでません。
そのため、カラッとした焼き上がりになります。
炭火焼きの注意事項としては、一酸化炭素中毒になってはいけないので、七輪は屋外で使うこと。
もちろん屋外でも、火を使いますから、気をつけてくださいね。
炭火は近所迷惑になることもありますが、汗をかきかき、煙の臭いを体につけながら味わうのもまたよし。
採れたてのとうもろこしを、炭火で焼いて食べる…最高の贅沢!
続いて醤油焼き
続いて、醤油焼き。
「皮ごと焼くとおいしい」という話を耳にしたので、挑戦してみました。
皮がいい色になってきました。
さらに焼いていくと、皮が焦げて、自然に取れてきました。
結局、最後はえいやっと皮を取ってしまいました。
だんだん焼けてきました!
刷毛で醤油を塗ります。
醤油の焦げる、いい匂いが漂ってきます。
焼けた!
醤油焼きも絶品!
ビールがほしいかも…。
今度は茹でてみました
炭火焼きの次は、とうもろこしの調理法としてポピュラーな「茹でる」。
でも、ちょっと一工夫してみました。
鍋に水を沸かし、沸騰した中にとうもろこしを投入。
3~4分、茹でます。
“一工夫”はコレ。
氷水です。
茹でている間に用意しておきます。
とうもろこしが茹で上がったら、すぐ氷水の中に入れて冷まします。
出来上がりました!
表面はツヤツヤ。
甘くて、とてもジューシーでした!
とうもろこし茶に挑戦
この“とうもろこし大会”の陣頭指揮に当たっていた編集部サヅカいわく「前にとうもろこし茶を飲んだことがある」。
そこで、先ほど茹でたとうもろこしを使って、とうもろこし茶に挑戦してみました。
とうもろこしの粒を取って、フライパンで炒ります。
十分に炒ったら、急須に入れて、お湯を注いで飲んでみます。
うーん……「以前に飲んだものと全然違う!」とのことで、どうやら失敗のようです。
長めに浸しておいて飲んでみたら、やさしい味がしましたが。
調べてみたところ、とうもろこし茶は、どうやら乾燥させたとうもろこしの粒を炒って作るようです。
韓国では古くから飲まれている、最も親しまれている日常茶なのだそうです。
ノンカフェインで、ビタミンとミネラルがバランスよく含まれており、食物繊維も豊富。香ばしさとほんのりとした甘み、コクがあり、飲みやすいのだとか。
また、漢方ではとうもろこしには薬効があるとされているのですが、特にヒゲは、「南蛮毛」という漢方薬として珍重されているそうです。
ヒゲを洗って日に干し、煎じて飲むと、利尿作用があり、むくみなどにも効き、高血圧を防止し、夏の疲労対策にも効果的なのだそうです。
今年の夏も、とうもろこし!
とうもろこしは今が旬!
焼いてよし、茹でてよし、蒸してよし。
Webのレシピやレシピ本を参考に、とうもろこし料理・お菓子にも挑戦したい!
とうもろこし茶も気になるし、ヒゲ茶も作ってみようか。
今後料理に使うため、旬のこの時期に生の新鮮なとうもろこしを多めに買って、茹でて実をはずして、冷凍しておこうか…。
…などなど、とうもろこしの利用法が、あれこれ頭を巡ります。
今年の夏も、とうもろこし!
旬の食材 春・夏の野菜(講談社 編、講談社、2004年)
そだててあそぼう[5] トウモロコシの絵本(戸沢英男 編、大久保宏昭 絵、農山漁村文化協会、1997年)
やさいを育てて食べよう!別巻 米・とうもろこし・しいたけ(深光富士男 著、芦澤正和 監修、学習研究社、2003年)
野菜&果物図鑑(ファイブ・ア・デイ協会・若宮寿子 監修、新星出版社、2006年)
トウモロコシ 歴史・文化、特性・栽培、加工・利用(戸澤英男 著、農山漁村文化協会、2005年)