おひさまと二十四節気

Vol.22  冬至・柚子

柚子

柚子の木のあるお庭、憧れです。アゲハも育つそうな。(画・祖父江ヒロコ)


弊サイトのトップページでは、ベースとなっている二十四節気七十二候の巡りを、シンプルな太陽の動向イメージ図とともにお伝えしてきておりますが、今年もまた、「冬至」という“境”となる節気を迎えました。

冬至とは、太陽の黄経が270度に達し、太陽が一番南にある状態をいいます。一年で最も昼が短く夜が長く(北半球)なることから、「死に一番近い日」とも言われますが、一方で<万物が甦る=太陽が復活する>という意味から、「一陽来復(いちようらいふく)の日」という別名をもっています。冬至に南瓜を食べ、柚子湯に入るという風習は、今も日本人の暮らしの中に息づいていますが、それはこの日が、厳しい冬の寒さを前にしっかり栄養を摂り身体を温め、無病息災を願うという、“節目の日”となるからでした。

冬至を感じる身近な事象としては、「影の長さ」があります。長かった影が冬至を過ぎると、少しずつ少しずつ短くなっていきます。中国には「紅線日を量る」という故事がありますが、これは、宮廷の宮女が毎日影の長さを測っていて、冬至以降は紅色の線で示したことに由来します。また、今では12月25日はクリスマスの日ですが、古代ローマでは、この日は冬至の日と定められ、やがて太陽の復活がキリストの復活と結びつき、復活祭のクリスマスがこの時期になったのだそうです。このように日本だけでなく世界各地の民俗における冬至の意義があるようで、人間にとって「太陽」という存在が、いかに大きく深く、また、密接な繋がりをもって年月が刻まれてきたかを想像します。

今、地球の現状は、温暖化よりも深刻な「地球沸騰化」という言葉で表現され始めています。私たちは決して、石油を飲みたいわけでも、捨て場のないままに溜まり続ける放射性ゴミの処理に困る原発を欲しているわけでもありません。欲しいのは暮らしに必要なエネルギーです。太陽と宇宙と地球により「平均15℃」が与えられている温熱環境をベースに、暖房はプラス数度、冷房は夏の外気温からマイナス数度あれば暮らせます。お風呂のお湯は40℃程度でしょうか。あとは、調理・洗濯機・冷蔵庫・照明・パソコンなどを動かすエネルギーですが、それらはみな「低レベルなエネルギー」です。だからこそそこに、<知恵や工夫>によって切り拓かれる道があるかと。

力となるひとつは、やはり「太陽」ではないでしょうか。太陽エネルギーには光と熱がありますが、重厚な機械装置を用いずとも、ダイレクトにその力を利用できるという点で、太陽の「熱」にあらためて注目したいと思います。冬の北ヨーロッパは日が短く、曇天の日が続くのに対し、日本は、北ヨーロッパより緯度が南にあるので、冬の日照時間が長く、寒さが緩和され、日射取得の面では非常に有利であることから、この国で「太陽の熱」を活かさない手はありません。そしてもうひとつ加えるとすれば、古代中国の思想家・老子の言葉でしょうか──『足るを知る』。自戒を込めて、最後に書き記させていただきました。