びおの珠玉記事

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雨を好きになる話

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから珠玉記事を再掲載しました。
(2010年04月20日の過去記事より再掲載)

雨

写真 photolibrary

二十四節気「穀雨」。
暦便覧に「春雨降りて百穀を生化すればなり」とあるように、このころに降る雨が、穀物を育ててくれるという節気です。穀物をふくめ、植物の生長に雨はかかせないものです。
日本では、雨は古くから「恵み」として尊ばれてきましたが、社会が農耕型から商業・工業型に遷移するにつれて、雨をうとんじるようになってきたのかもしれません。テレビの天気予報では、「晴」がいいこと、「雨」は困ったこと、というように扱われることがしばしばです。

そんな現代ではありますが、やっぱり雨っていいものだと思わせる、「穀雨」にふさわしいご寄稿をいただきました。

「雨って好きかも」

挙手

「雨が好きな人、手をあげて」
とある小学校で機会をいただき、雨水利用の授業をしました。
その冒頭で、子どもたちに聴いてみました。
すると男の子を中心に、半分くらいの子どもの手があがりました。
ちょっとうれしい気持ちになりました。

理由を聴いてみると「濡れて愉しい」「水たまりでバシャバシャ遊べる」などいかにも子どもらしい答えが返ってきます。

次にある条件をつけて、同じ質問をしてみました。
すると全員の子どもたちの手があがりました。

実はその小学校では、総合的な学習の時間を利用して、6年生全員で「緑のカーテン」を育てています。
「緑のカーテンの気持ちになって、答えて」という条件をつけて聴いてみたわけです。
ゴーヤー雨水
穀雨とは、穀物の成長を助ける雨のことだそうです。
子どもたちは、緑のカーテンとの関わりの中で、雨が成長に欠かせないもの、とても大事なものだと感じ取っています。

「雨って好きかも」
雨水利用の授業の感想を集めた先生が、一番印象に残った子どもの言葉です。

太陽や風だけでなく、雨とのつながりや関わりも大切にする。
そんな生活を始めてみませんか?

−雨のみちをデザインする−
株式会社タニタハウジングウエア
代表取締役社長 谷田 泰
http://www.tanita-hw.co.jp/

いかがですか? 家をつくるときには、日あたり、風通しといったことがクローズアップされますが、日本は雨の多い国です。雨に濡れない、雨を防ぐといった雨仕舞いだけでなく、雨を積極的に活用する、雨を楽しむという気持ちも忘れたくありませんね。

雨と日本人

お米

穀雨とは、穀物を育てる雨のこと

私たち日本人は、古くから「雨」に風情を感じ、雨についてさまざまな言葉や文献を残しています。

雨にまつわる言葉は、それこそ数えきれないほどあります。たとえば春の雨ひとつとっても、育花雨、紅雨、膏雨、桜雨、洗街雨、洗厨雨、菜種梅雨、春時雨、春驟雨などなど。
5月になると、「五月雨さみだれ」という言葉があると同時に、「五月晴れ」という言葉もあって、晴れても良し、降っても良し、というような、昔の人のおおらかさや感受性の豊かさが見受けられます。

「雨」の語源は、「天(あめ)」とする説、「天水(あまみず)」とする説がありますが、いずれにしても、雨が農耕生活や林業などに密接に関わっていたことから、雨を神のように扱っていたことが伺えます。

大伴家持は、万葉集で

我が欲りし 雨は降り来ぬ かくしあらば 言挙げせずとも 稔(年)は栄えむ

と歌っています。
欲していた雨が降ってきたので、これなら雨乞いしなくても豊作だ、というようなことをいっています。

新国劇の月形半平太の有名な台詞

「春雨じゃ、濡れてまいろう」

には、いろいろな意味合いが込められていて、日本人の「雨感」の代表の一つではないでしょうか。

もっともストレートに雨の嬉しさを伝えている歌は、童謡“あめふり”の

雨 雨 降れ降れ母さんが 蛇の目でお迎え 嬉しいな
ピッチピッチ チャップチャップ ランランラン

でしょうね。

雨については、中村汀女偏・「日本の名随筆・雨」に、雨を題材にしたさまざまな名文句が記されています。雨をもっと好きになりたいかたは、ぜひご一読を。

天気予報の表現のしかた

天気
天気予報では雨が降る際の表現方法として、「時々雨」や、「のち雨」等という言葉が用いられますね。「時々」や「のち」、「一時」で雨の降り方はどのように変わってくると思いますか。何となくわかりますが、具体的にはどう区別をしているのでしょう。気象庁によると、

一時雨/雨が連続的に降り、その降っている時間が予報期間の1/4未満の場合。
時々雨/雨が断続的に降り、その降っている時間が予報期間の1/2未満の場合。
のち雨/予報期間の後半が雨の場合。

ということです。日本で天気予報が初めて発表されたのは、明治17年のことですが、今ではここまで予測できるようになっているのですね。上記のような表現が使われた時にはほんとかどうか、一度調べてみるのも面白いかもしれません。

参考文献
雨と日本人 宮尾孝 丸善ブックス
日本の名随筆43 雨 中村汀女偏 作品社