びおの珠玉記事
第167回
干潟の顔色を見に行こう
※リニューアルする前の住まいマガジンびおから珠玉記事を再掲載しました。
(2009年05月05日の過去記事より再掲載)
浜名湖の潮干狩りに行きました。浜に下りて砂泥を掘り始めると、出てくるのは、イヤというほどの貝殻の破片で、掘り出したと思ったら巻貝かヤドカリです。ベテランは、深く掘るよりも、平泳ぎの要領で掘り続けると、浜名湖では、おいしいアサリにあたるといいます。
干潟は干潮のときだけに現れる仮の陸地です。干潟のような遠浅の海では、潮が満ちて陸が海にかわるスピードが速く、数分で何メートルも波打ち際が移動することがあります。
浜名湖は潮の満ち引きの時間がはっきりしていますので、それをあらかじめ調べ、海の変化に気をつけて活動することが大事です。
アサリにあたると、どういうわけか「アサリの酒蒸」が頭に浮かびます。すまし汁もいいかも、と思ったりもしました。
干潟とは、海岸部に発達する砂や泥により形成された低湿地をいいます。干潟は潮汐による海水面の上下変動があり、時間によって陸地と海面下になることを繰り返します。砂浜に比べると波浪の影響が少なく、土砂粒径が小さくて、勾配が緩やかで生物相が多様です。浜名湖が厳密な意味で干潟というのかどうか分りませんが、調べてみて、干潟といわれる特長を有してはいます。
しかし、長崎に行くとき、列車の窓からみえる有明海は、なるほど、これが干潟なのだといえるほど大規模なもので、浜名湖と比較するのは、恥ずかしいかな、と思いました。
その有明海の干潟も、例の諫早河口堰によって、元の姿を年々失っているということです。諫早のあたりを列車が通過するとき、河口堰が遠望されますが、それは大きな堰でした。
干潟の大きさは、河川や沿岸流による土砂の供給量や、海岸部の地形、潮汐による海水面の変動量によって影響されます。干潟は、河川と沿岸流による土砂の供給と、波浪・潮流による土砂の侵食との微妙なバランスの上に成り立っている地形であることから、そのバランスが崩れると、乾燥した陸地になるか、海面に没してしまいます。
干潟は、潮汐作用と生物群によって、水質を浄化する作用があり、そこに生息する生物群を求めて渡り鳥がやってきます。
日本では1945年に80,000haあった干潟が、1990年に51,443haに激減しました。この減少を食い止めようという保護運動が盛んになり、ラムサール条約に登録された谷津干潟や漫湖干潟などは、恒久的に保全がされることになりました。
干潟の状態は、環境による影響が正直に顔に出るといいます。
潮干狩りに行ったら、干潟の顔色を見てきてください。