びおの珠玉記事

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冬はやっぱり鍋でしょう!

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから珠玉記事を再掲載しました。
(2008年12月07日の過去記事より再掲載)

鍋料理

写真 : photoAC DragonOne


誰がなんと言おうと、冬は鍋物に限る!
おいしそうな鍋物を作りながら、鍋について考えてみました。

どうして冬は鍋なのか。

非常に独断的で恐縮ですが、冬は鍋物に限ります。
我が家では鍋物ばかり食べています。
子どもが飽きて他のものを食べたがったって、鍋にしちゃいます。

どうして鍋物ばかり食べるのか?あらためて考えてみると、

  • 簡単にできる
  • 体積の割に低コストである
  • いろいろなものが食べられる(楽しいし、栄養バランスも良い)
  • おかずにもつまみにもなる

というような理由です。これじゃあ、季節が関係ないじゃないですか。
どうして鍋は冬の料理なのでしょうか。

白菜

旬の野菜は栄養も「かさ」もあるので鍋にぴったり。


寒いから? 体を暖めたいから? 夏に食べたら暑いから?
でもラーメンは年中食べますよね。
中国の火鍋(読んで時のごとく、火の様に辛い)なんかは、暑いときに食べて暑気に打ち勝つ、なんていうこともあるぐらいです。

それでも冬に鍋をやる理由。それは、白菜や白葱、大根等、鍋に入れるとおいしい食べ物が旬だから、なのでしょう。

難しい話はあとにして、鍋を食べる。

「びお」の特撰ブロガーの皆様は、食べ物好きの方が多いのですが、その中からいくつか鍋を参考にさせていただきました。

「レイコさんの食卓から」
「カムジャタン」

ジャガイモメインの韓国の鍋です。
真似して作ってみましたが、なんと写真を撮らずに食べてしまいました。

「ばーさんがじーさんに作る食卓」
「ブリのチゲ鍋」

また韓国ものです。こちらはマネをして、というより、インスパイアされて作ってみました。

ブリが少し売り切れだったので、アンコウも入れてみました。
以下無手勝流ブリアンコウ鍋です。

下準備

  • 昆布を水にいれて放っておく。ダシ用だけど、いっしょに食べちゃうので一口サイズに切る。
  • ブリの切り身に塩をした後、熱湯をかけて霜降りに。
  • アンコウも熱湯をかけて霜降りに。
  • 白菜、豆腐、人参、えのき茸、春菊は適当に切る。

調理

昆布に火をかけてスタート。
アンキモ
アンキモを炒める。貧乏鍋なので、アンキモはこれっぽっち…

脂が出るまで炒めたら昆布だしをまるごと投入。

人参、えのき茸、ブリ、アンコウを投入。
ここでコチュジャン、酒、酢、しょっつるを適量投入。
貧乏鍋
途中経過。教科書にはアクをとる様に書いてあってもとらない。食材の主張を尊重しているから、ということにしておく。

豆腐、白菜を投入。

コチュジャンを入れすぎて辛くなったので、味噌で調整。

春菊を少し煮て出来上がり。
無手勝流ブリアンコウ鍋
主役を二人に設定してしまったので、ちょっと目的がぼやけましたが、なかなかグッド。昆布にアンコウの味がうつっていて、これが美味でした。

鍋物って何?

さて、鍋に入っていれば何でも鍋物なのでしょうか。
そうすると、みそ汁もカレーもみんな鍋物になってしまいます。
すき焼きやおでんは微妙です。人によっては鍋料理だと考えるでしょうし、認めない人もいるかもしれません。

ここでは主観的ではありますが
土鍋に入っている(のが似合う)
食卓に置いてそれぞれが取り分けて食べる(個別に配膳しない)

ものを鍋物に分類してみます。ので、当記事ではすき焼きやおでんも鍋物です。

「鍋」という言葉が、入れ物だけでなく、料理そのものを差す様になったのは江戸時代中期以降に「小鍋立て」と呼ばれる料理方法が普及してからだと言われています。

『江戸繁昌記』(1832)には「凡そ肉はねぎに宜し、一客に一鍋、火盆ひばちを連ねて供具す」という記述から、客に鍋料理を出す様子が見られます。

美食家として知られる北大路魯山人が、鍋の極意について語った内容を紹介したブログがありました。

料理としてのうまさと、シチュエーションによるうまさということを区別し、だしが出るもの、吸うものを交互に食べきるようにして、「最後まで新鮮で溌剌とした料理を食べる」のです。

魯山人は「すき焼き」についても、肉そのものの味を活かした食べ方ではないとして、魯山人風のすき焼きを考案しました。濃い割り下などは使わず、だし汁に酒、醤油で味付けし、肉を食べきってから野菜を入れ、これを食べてからまた肉を入れる、というものです。先の鍋の極意で語っていることを、すき焼きでも実践したのです。
一般的なすき焼きとは、見た目も味も異なりますが、是非一度お試しあれ。

住宅事情の変化は鍋物を滅ぼすか?

古くは「衣は一代、住は二代、食は三代」などといわれ、味覚は三代以上の時間をかけて緩やかに変化するものだといわれていました。
ところが、昨今の情報過多時代にあっては、「食」は「衣」に負けないほどに激しく変化をし、一方で、「住」もまた、めまぐるしい変化にさらされています。
鍋
日本で鍋物が広く根付いた理由の一つとして、囲炉裏端での食事に適していた、ということがあげられるでしょう。コトコトと煮込むこと、みんなで囲む事など、囲炉裏は鍋物にぴったりなのです。

囲炉裏は一般家庭から姿を消しました。鍋物は、カセットコンロによって、食卓に生き残っています。
住宅の暖房方法(囲炉裏は暖房も兼ねる)や気密性能は大きく変わりましたが、鍋物から美味しそうに立ち上る湯気の量は変わらないのです。

カセットコンロ

カセットコンロは手軽ですが、事故に注意!


囲炉裏で薪を燃やしたときに出るタールは、屋根廻りに浸透して、建材の長寿命化に貢献するという説があります。一方で、鍋からでる水蒸気は、昔の家の気密では問題にならなかった量ですが、住宅の気密化が進むに連れて、結露の原因となってきています。カセットコンロは開放型の燃焼機器ですから、使い方を誤れば酸欠や一酸化炭素中毒の可能性もありますし、同じく結露の原因にもなります。カセットコンロが原因の火災も年々増加傾向にあります。
だからといって、突然カセットコンロが禁止されることは今のところ考えにくいのですが、いつか食卓で火を使えなくなる時代が来てしまうのかもしれません。
そんなことにならないように、火の元と換気には気をつけて楽しく鍋をつつきましょう。

コラム「しぞーかおでん」

私、サヅカは静岡県清水市(現静岡市清水区)の出身です。
先におでんは鍋物である、と定義しました。そこで郷土料理「しぞーかおでん」をご紹介します。

静岡おでん

牛すじや黒いスープが特徴。本場物はもっと黒い。


B級グルメ好きの方ならご存知「しぞーかおでん」。静岡のおでんです。
キリンビールの宣伝にも使われ、その名は全国区になりました。

静岡おでん五ケ条(「旨いじゃん!静岡おでん」より)

  • 黒はんぺんが入っている
  • 黒いスープ
  • 串に刺してある
  • 青のり・だし粉をかける
  • 駄菓子屋にある

静岡おでん

だし粉と青のり、黒はんぺんがポイント。


そもそもおでんといえばこれが当たり前でしたし、はんぺんといえば黒はんぺんで、白はんぺん(普通のはんぺん)なんて、大人になるまで食べた事もありませんでした。コンビニでおでんが売られる様になって、その透き通ったスープに驚いたものでした。
静岡県でも編集部のある浜松市になると、もう「しぞーかおでん」ではないようで、スタッフははじめて食べる「しぞーかおでん」に、驚きながらも一様に「うまい」を連発!(自慢げですが、自分で作らず、スタッフに作ってもらいました。)