Compostage obligatoire!
ところかわれば
| 森弘子
フランスでは現在は諸聖人の祝日のバカンス(秋休み)で学校がお休み。その間にちょっとハロウィーンを楽しんだあと、それが過ぎると一気に世間はNoël(ノエル、クリスマス)一色となり、そのまま例年同様新年に向かっていきます。
しかし、今年はフランスの新年の家々はほんの少しだけいつもと風景が違います。庭に大きな容器が出現したり、キッチンの片隅に小さなバケツが登場します・・・。
フランスでは2024年1月1日から、自宅でのコンポストが義務化(Compostage obligatoire)されます。これは、2020年2月に施行された廃棄物対策と循環型経済に関する法律(La loi de février 2020 contre le gaspillage et pour l’économie circulaire)で、2024年1月1日以降、フランスにおけるすべての個人に対し、バイオ廃棄物を発生源で分別するための実践的な解決策を行うことが規定されたことによります。
フランスでは、すでに同じ廃棄物対策と循環型経済に関する法律に基づいて、具体的にどのようなステップで2040年までに使い捨てプラスチックを減らしていくか明示し、実践しています。
フランスでは、食品ロスや廃棄物は年間1,000万トンに上ると言われています。(日本は年間610万トン(2020年農林水産省統計)、フランスの人口は日本の約半分の6,775万人なので深刻さが伺えます) 現在はいわゆる生ゴミは場所によっては分別して集められていますが、多くの場所で一般ゴミとして廃棄されています。
今回のコンポスト設置の義務化は、個人に対する負担が増えるので大きな変化と言えます。戸建て住宅では設置は比較的容易ですが、アパート(特にパリのアパルトマンは狭い・・・)では設置する場所が問題となります。戸建て住宅でも場所があるとは限らないので、自治体で地区に共同コンポスト容器を設置したり、アパートではゴミ収集スペースに共同のものを設置されることで解決します。集められたバイオ廃棄物は他のゴミと同様にゴミ収集業者によって回収されます。これは個人宅だけでなく、学校や職場、公共施設、公園にも適用されます。
狭い家でもコンポストを自分たちでできるように、さまざまな製品も販売されています。よく見かけるのがlombricomposteur(ロンブリコンポスター、ミミズコンポスト)です。Lombricはフランス語でミミズのこと。バイオ廃棄物を分解して土にしてくれるミミズをバケツの中にバイオ廃棄物とともに入れ、土にしてもらうという仕組みです。中にはインテリアに合うように鉢植えと一体になった製品もあり、我が家でも導入を検討しています。
フランスでは、住民1人あたり年間平均83kgのバイオ廃棄物を捨てていると推定されています。しかし、分別収集すれば、土壌を豊かにする天然肥料として利用することができます。また、バイオガスに変えて公共交通機関のバスの動力源にすることもできます。この法律では、自宅にコンポスト容器を設置しなかった場合の罰則については言及されていませんが、バイオ廃棄物の分別に関する指示に従わなかった場合は、35ユーロ(支払い期限を過ぎた場合は75ユーロ)の罰金が科されることが定められています。
個人の少し負担が少し増えても、大きく環境を改善していくためには当たり前だとし、具体的なアクションを次々に起こしていくところがフランスらしい、と毎度このような変化が起きると感じます。具体的な目標を立てた2040年まではあと16年。その頃フランスの風景はどのように変わっているのでしょうか。