秋の舞台芸術祭 Le Festival d’Automne à Paris
ところかわれば
| 森弘子
現在パリでは舞台芸術祭、Le Festival d’Automne à Paris(ル・フェスティバル・ドートンヌ・ア・パリ)が開催されています。1972年からつづくフランスにおける代表的な芸術祭で、毎年秋頃に開催、実施期間は長く9月から翌年2月にまで渡ります。芝居、ダンス、コンサート、ありとあらゆる舞台芸術が、パリ市内とその近郊の劇場やコンサートホールで同時多発的に開催されます。
3月中旬の外出制限以降、制限が解除され6月に舞台芸術の公開が再開されても観劇等は控えていましたが、芸術の秋、秋のパリらしさを味わうために、9月末にフィルハーモニー・ド・パリで行われたフランスのフィルハーモニー管弦楽団Les Siècles(レ・シエクル)によるモーリス・ラヴェル作曲「Bolero」を含めた4楽曲のコンサートを聴きに行きました。Boleroはフランスの若手ダンサーによるパフォーミング付きです。
今年のフェスティバル・ドートンヌはコロナウイルスの影響がありながらもほぼ通常通り開催されています。イベントによりますが、従来から事前予約制のものが多く、このコンサートについてもインターネットでの事前予約となりました。
通常通りの開場で、入り口ではセキュリティチェックに合わせてアルコールでの手の消毒が義務付けられています。館内はもちろん、上演中を通してマスクの着用が義務。すでにパリは涼しい季節になっているのですが、上演中も合わせてのマスク着用は息苦しいかぎり。クロークも閉じられていて、いたるところに消毒用アルコールが設置されていてやはり通常時とは違う雰囲気でした。
座席は全席指定ながらも、ウイルス対策のため自分の席がある列では来た人順に置くから詰めて座るスタイル。遅れて来た人のために席を立って奥に行くために接近しないためで、グループごとにひと席離すように指示されました。座席の前後は通常通りで開けてあるわけではないので、人と近く少し気になります。
上映時間は幕間なしの1時間半程度のもの。奏者は自分の席に行くまではマスク着用で、着席すると取り外している様子。演奏が始まると通常通りでしたが、指揮者とコンサートマスターの握手は肘でタッチし合う方法で挨拶。客席からもくすくすと笑いが起きていました。
半年近く直接観るスタイルの芸術鑑賞をしていなかったので、感動もひとしお。心の底から楽しむことができました。家で静かに音楽を聴くのも良いですが、こうして生でオーケストラの動きや場の空気を感じながら鑑賞することにはかえがたいと感じました。
芸術祭が通常通り開催されている一方、フランスは9月以降ほぼ全域でコロナウイルスの危険度が赤(危険)になるなど状況は予断を許しません。南仏のマルセイユではレストランやバーが閉鎖になり、パリでは22時に閉店することが義務付けられています。医療も徐々に圧迫されてきており、経済のために再外出制限はしないとの噂を聞きますが、今後どうなるのかはっきりしない状況です。誰もが自由に安心して芸術を楽しめる日が来るよう願うばかりです。
◇『Le Festival d’Automne à Paris(ル・フェスティバル・ドートンヌ・ア・パリ)』
公式ウェブサイト:https://www.festival-automne.com/
プログラム一覧:https://www.festival-automne.com/programme