Vegan en France

ところかわれば

森弘子

Vegan(ヴィーガン)という用語をご存知の方も多いと思います。ヴィーガンは、植物性のものを主に食べるベジタリアンの中でも、卵や乳製品など動物由来のものも摂取しない主義を指します。ヴィーガンといっても、そのコンセプトはいくつかあり、健康上の理由から動物性のものを口にしないというものから、動物性のものを食品以外でなく製品(服や靴、化粧品など)からも排除し動物を製品化することを否定するもの、畜産業が環境に与えるインパクトが大きいため食事に取り入れないといった内容まで、ヴィーガンを選択する理由は様々です。

我が家では、少し前から基本的には動物性のものを食事に極力取り入れない“ほぼヴィーガン”を実践しています。理由は畜産業や産業漁業が環境に与える影響が大きいため。なんの気はなしに見た環境ドキュメンタリーで、このままの漁獲量だと数十年後には海にいる魚を食べられなくなるという話をみてショックを受けたことが発端です。我が家には2歳になった子どもがいますが、その子が将来美味しい魚が食べられない可能性があるということがとにかく衝撃でした。その後現在の畜産業・産業漁業が環境に与えるインパクトを知ろうといくつかのドキュメンタリーやサイトを観て、事の重大さと緊急性にこれはなんとかアクションせねばと思い、肉・魚・卵・乳製品を購入しない・食さない選択することにしました。

そこで問題になったのが、これまでの食生活をどう変えていくか。基本的には肉や魚を中心に、野菜も多く摂取して来ましたが、肉や魚、卵も一切とらないとなると、これまでベースにあった献立が成立しません。とはいえ、フランスでは近年ベジタリアンやヴィーガン人口も増加傾向です。ひとまずはいつもいくオーガニックの製品を扱う近所のスーパーに行ってみました。

すると多くはないものの、見つかるヴィーガン製品の数々。

フランスのオーガニックスーパーチェーンのNaturaliaで売っている大豆由来のハンバーガー用パテ しっかり味付けがされていてパサつきもせずとても美味しい Veganと明記されている

大豆が主材料のナゲットやバーガー用のパテ、チーズなど。日本の厚揚げも売られていました。考えれば、和食は精進料理もありますし、動物由来の製品を使わなくても考えられる献立がたくさんあります。

しかし、洋食はなかなか難しいところ。息子も大好きなピザは乳製品であるチーズを使います。そこで、フランスだからこそできるヴィーガンの食生活はないか・・・と家の近所の本屋さんを見てみると、何冊かヴィーガンのレシピ本が見つかりました。

『INCROYABLE MAIS VEGAN!(信じられないけど、ヴィーガン!)』(Marie Laforêt/Alternatives) 100%植物性のハンバーガーからピザ、バター、チーズ、ケーキやアイスクリームの作り方まで載っている

中でもこのレシピ本は従来の肉や乳製品のレシピをヴィーガンに代替している面白いレシピで、定番のブフ・ブルギニョンなどフランスの肉料理から、これまたチーズ好きのフランスらしくモッツァレラからブルーチーズまで、カシューナッツや豆乳、ジャックフルーツなどを使う植物性のものだけでつくれるレシピが満載でした。

フランスの食文化といえば、カフェやビストロではタルタル(牛生肉のみじん切り)やコンフィ・ド・カナール(鴨を低温でじっくり揚げたもの)など肉料理が定番です。都市部では既存のレストランでもメニューにベジタリアンやヴィーガン対応のものが少しずつ増えて来ているようですが、地方ではまだまだ伝統的な動物性の製品を使ったものがメインのようです。

オーガニックスーパーのヴィーガン製品の棚 左がヨーグルトなどの植物性乳製品で、アーモンド、豆乳、ココナッツベースのものがメイン 右は豆腐やチーズ 豆腐はトマト味、バジル味やスモーク風味など味付けがしっかりされているものも多い 日本人には抵抗があるかも・・・

少し前の2018年のデータですが、フランスでは人口の約2%がヴィーガンまたはベジタリアンであるという統計があります。決して多くありませんが、2018年は前年比でヴィーガン製品が24%売り上げ増だったというデータもあります。環境保全に対する意識の高いフランスでも、今後ますますベジタリアン・ヴィーガン製品の需要が増えていきそうです。