フランスの幼児教育

ところかわれば

森弘子

日本では4月の入園式もすぎ、子どもたちも保育園や幼稚園に慣れてきた頃でしょうか。フランスでは入学は9月。長い夏のバカンスが終わったあと、現実に引き戻されるごとく、学校通いの日々が始まります。

日本でいう幼稚園は、フランス語では「école maternelle(エコール・マターネル)」。écoleは「学校」、maternelleは「保育」の意味で、なので我が家では幼稚園とは言わず、“学校”と表現しています。フランスでは、2019年から3歳以上の子どもが義務教育の対象となりました。考え方としては、「その年に3歳になる子どもが入学」、つまり2021年9月には、2018年1月から12月生まれの子どもたちが入学します。しかし、地域によっては子どもが少ないため、いわゆる繰り上がり入学が可能で、2019年1月生まれの長男は、本来は今年9月入学なのですが、昨年9月に入学させてもらいました。

学年の分け方は日本とほぼ同様で、3歳がpetite section(プチトゥ・セクション、年少)、4歳がmoyenne section(モワヤンヌ・セクション、年中)、5歳がgrande section(グランドゥ・セクション、年長)です。繰り上がりで入る小さい子たちはtoute petite section(トゥ・プチトゥ・セクション)と区切られますが、長男の学校はpetite sectionと一緒になっていて、長男は今度の9月からはpetite sectionに上がりますが、結局教室も先生も今と一緒です。クラスの人数は学校によって違いますが、長男のクラスは24人です。

公立の学校は、入学費・授業料等はすべて無料。給食費のみ、それぞれの家庭の収入によって計算された金額を支払います。私立の学校は伝統的な学校からモンテッソリーの学校、バイリンガル(英仏)の学校など様々です。

学校が始まる時刻は8時30分。現在はコロナ対策から、学年別に5分ずつずらして登校しています。本来は保護者が教室まで送迎できるのですが、現在は入り口で。終わりは曜日によって違いますが、多くの子どもが16時半まで残り、そのあとは学童保育が可能で、18時まで預かってくれるシステムもあります。残らない子も多くはそのまま近くの公園に保護者と移動するので、16時半から急に周辺の公園は混雑します。水曜日は、授業は午前中のみで、午後は保護者と過ごす、学年が上がると習い事に行く、という子どもが多い印象です。

学校が始まったのは9月2日。コロナのせいもあり、学校見学や事前面接もなく、いきなり登校。入学式もありません。教室に最初の2日間は親も同伴しましたが、20分程度で退散し、その日は初日にもかかわらずいきなり8時間の16時半にお迎えでした。事前に何の説明や書類も渡されず、登校して初めて説明を受けました。その為慌ててその日にいろいろなものを買いに行ったり、ネットで注文。その辺り、ゆるいフランスらしく、準備をしながら笑ってしまいました。

長男が通うパリ7区の公立のécole maternelle 授業中なので誰もいないが、16時半のお迎えになると隣の小学校とも合わせて子どもとお迎えの保護者でごった返す フランスは家庭によるが帰り道にお菓子を食べながら帰る習慣があり、クッキーやジュースを楽しみに飛び出してくる子もいる

8時半に登校した後は授業が始まります。先生は一人、そこにもう一人アシスタントの先生がつきます。他にもトイレを手伝ってくれるスタッフがいます。その後11時半にcantine(キャンティーヌ、給食)がはじまります。フランスの多くの学校では給食の食材をオーガニックのものやラベルつきのものにしています。時々野菜のみのベジタリアンの日もあります。その後はsieste(シエストゥ)でお昼寝の時間で、寝ない子は静かに遊びます。その際に重要なのがdoudou(ドゥドゥ)で生まれた頃から持っているぬいぐるみやブランケットなどを学校に持ってきて、お昼寝の時に一緒に眠ります。これは学校と家庭をつなぐ重要なものとして、生まれた時から用意するように言われるもので、フランス人であればほとんどの子どもが何かしらのdoudouを持っています。

ある週のcantineの献立 オーガニック(Agriculture Biologique)、地産地消(Produits Locaux)、品質が保証されたもの(Label Rouge)、持続可能な方法で釣られたもの(Pêche durable )など、健康や環境に配慮した素材が使われていることがわかる 木曜日はオーガニックの日で、献立は牛肉のミートボールカレー、セモリナ、ヨーグルト、りんごで、すべて有機食材が使用されている

授業では歌、ダンス、おかしづくりなど皆で一斉にやるものもあれば、教室内にあるおもちゃで自由に遊ぶ時間、そして中庭で他の学年の子どもたちと混ざって遊ぶ時間もあるようです。そして”学校”というだけあり、アルファベットの授業などもあるそうです。長男の通う学校は熱心な先生が集まっていること、そして保護者会の要望が強くあったことから、毎週火曜日に英語の授業も設けられています。お絵かきや工作も頻繁にするようで、ある程度たまると袋に入れてもたせてもらい家に持って帰ってきます。

課外授業も月に数回あり、近くの公園へ出かけます。出かけるときは先生二人に加えて、保護者が有志で参加し、子どもたちの見守りをします。近くの公園に付属している作業小屋で公園を管理する人から植物について学んだり、先日はイースターに関連して卵さがしをしました。

学校から歩いて5分の公園でイースターの卵さがし 先生が説明している間に保護者が卵をかくし、子どもたちが探す このような季節のイベントは積極的に授業に問い入れられている

フランスの学校の特徴はとにかく学校休みが多いこと。9月に学校が始まり、10月末には秋休み(諸聖人の祝日前後の休暇)が2週間あります。その後また12月末にはクリスマス休暇、2月末には冬休み(スキー休み)、そして4月末には春休みが各2週間あります。そして7月頭からは長い長い2ヶ月間の夏休み・・・。慣れた・・・と思った頃にはまた休み、の繰り返しです。とはいえ公立の学校や一部の私立の学校は休み中も有料ですが学校で預かってくれるので、働いている保護者でも安心です。

教育制度や学校にまつわる風習も国によっていろいろ。今回は書ききれなかった行事などにも特色がありそうです。