サステナブルな実験場

ところかわれば

森弘子

パリ北東の郊外にパンタンという町があります。RER線のパンタン駅南側の運河沿いはカフェなどが並び、穏やかな雰囲気です。北側はフランスの東部からパリへ入る電車の線路や停車場が運河沿いにあり、少し工業的な雰囲気があります。その一部に、1ヘクタールにわたる大きな敷地を持ったla Cité Fertile(シテ・フェールティル)という場所があります。

前回お伝えしたle Grand Controlと同様、パリ近郊で増えている既存施設を再利用したサステナブルをコンセプトにした施設ですが、la Cité Fertileは広大な敷地全体を利用しているのが特徴です。

パンタン駅から向かう線路上の橋から見たla Cité Fertileの一部

2018年にオープンしたこの場所は、環境対策や社会・環境連帯経済(環境に配慮し地域に経済を還元する目的でつくられた仕組み)に関わるプロジェクトや活動を集め、市民の集まりや起業家のイノベーションの場、カンファレンス、パーティなど文化的な催しをするための場としてつくられました。都市計画の移行期間中に設けられ、数年限定でオープンしています。

訪れた日は冬から続いていたイベントの最終日で、ホールでは子どもたちに向けたDJによるダンスイベントとお面をつくるワークショップが行われていた

生物多様性保護区としても機能しており、都市の中のサステナブルな実験場として構想されました。より環境に配慮した方法で食事、生産、ガーデニング、トレーニングなどを行うための場が敷地内に点在しています。季節の食材や地産地消の食材を提供するレストランや醸造所などがあり、他にも菜園、温室、コンポスト、雨水貯留槽、250種類の樹木や植物なども設けられています。

レストランや売店で飲み物を購入すると再利用可能なカップで渡され、飲み終わると写真の機械に入れ、1€払い戻すか(右)、1€地域経済に還元するか(左)選ぶことができる

敷地の広大さと多様さを利用し、イベントからスポーツ、教育など多岐にわたるコンテンツを許容しているのも特徴です。期間限定ではありますが、気候変動に対して敷地の大きさからもインパクトが大きいと考え、徹底して環境配慮した施設としているのが印象的でした。

これまでいくつか類似の施設を紹介してきましたが、パリ近郊ではこのようなサステナブルをコンセプトにした既存施設の再利用をしたプロジェクトが増えています。社会全体としての環境変動に対する危機感や関心があるように感じます。

la Cité Fertile
14 avenue Edouard Vaillant, 93500 Pantin
アクセス:Pantin(RER E)、Hoche駅(5番線)、Quatre Chemins駅 (7番線)、Ella Fitzgerald(Tram 3b)
https://citefertile.com/