びおが町の工務店に向けてWeb広報塾をひらくワケ
地域に根ざした工務店の広報とは?
| びお編集部
工務店広報の新たな担い手を養成する広報塾スタート!
工務店広報というと、どんな業務内容を思い浮かべますか。チラシやパンフレットなどの制作物のデザイン、見学会やイベントの企画・運営といったところでしょうか。とは言え、多岐にわたる広報業務は、担当者それぞれに独学で進めていたり、他業務と兼任だったりというケースは珍しくはありません。そんな工務店広報の現状を鑑み、新たな担い手を養成しようと始まったのが、「Webびお養成塾」です。
「住まいマガジン びお」を運営する「町の工務店ネット」では、全国の工務店をつなぐネットワークの運営事務局を行っています。主な会員は、年間10棟ほどを受注する独立自営工務店であり、その町に代々続く老舗の中小企業。会員工務店に向け、日々の住まいづくりを支える学びの機会を提供しようと、見学会や勉強会を年間数回企画・運営しています。
その中で、昨年8月「住まいマガジン びお」の企画として、Web広報術を学ぶ「Webびお養成塾」を開講しました。
いまどき、チラシを撒いているだけで大丈夫?
最近よく聞く話に、建物見学会の集客がむずかしくなった、チラシを5万枚撒いても5客だけだった、情報誌掲載広告も期待できない、という声を聞きます。少し前まで「行列のできる工務店」と言われ、建物見学会を開くと100組を超える来場者を数えた工務店が、です。これまでの蓄積で、今は受注できているものの、先々が心配だと言います。同じやり方では通用しなくなる時はもうとっくの昔に到来してしまいました。
総務省が実施した「平成28年通信利用動向調査1」には、調査時から5年前の平成23年と比較して、インターネットの利用動向は増加傾向にあり、特に50代ではスマートフォンの利用が10ポイントも上昇しているという結果が出ています。つまり、情報収集の媒体が確実にインターネットへと変わっているのです。自分自身の生活を省みてもそうではないでしょうか。新聞よりもテレビ、テレビよりもインターネット。それは全世代に共通した動向と言え、どの業界のどの企業もWeb戦略に取り組まざる終えない状況です。
自社のホームページが一番の情報源
Webを介したソーシャルメディアやSNSの種類が増えていく中で、一番自社の情報が集まっている場所はどこかと言えば、ホームページ(自社のWebサイト)ではないでしょうか。施工実績や家づくりへのこだわり、日々のスタッフブログなど、その工務店がどんな仕事をするのかをまとめて知ることのできる場所は、ホームページです。そして、Webが紙よりも優位なのは、いつでも最新情報が入手できるところだと言えます。(ちゃんと更新していれば……。)
ところで、ホームページまで調べてたどり着いてもらうためには前提に何が必要と思いますか?答えは簡単です。その工務店の名前や商品名を知っていること。そして、それを調べたいと思う関心があることです。
しかし、一社ごとのホームページを丁寧に見ていくと、更新情報の多くが家づくりの具体的なこと。やれ上棟式だ、やれ建前だと施工の進捗を逐一報告し、構造や耐震、素材などを取り上げて、我が社はここまで家づくりにこだわっています!見学会へのご参加いかがですか?……とアピールが続きます。家づくりの専門家ですから、どれだけ素晴らしい家を建てているのかアピールするのは当たり前!他に何を伝えたらいいの?と、多くの工務店従事者が思うはずです。
ターゲットは、まだ家づくりに興味のない潜在的な顧客
そこで考えてみたいのが、家づくりの具体的なことを知りたいと思う人たちはどんな人か?それは、すでに家づくりに関心を持ち、どの工務店に発注しようか迷っている人たちではないでしょうか。しかし、近年ますます新築物件数が減少している中で、家づくりをしようとしている人を寄せるために、かなり即物的な売り方で迫るのが、大手ハウスメーカー。業界でも破格とされるような金額やパッと目をひくフォトジェニックなデザインなどで訴えかけます。それらの派手なCMに対して、愚直で懇切丁寧な注文住宅を手がける工務店に勝ち目があるとしたら、どんな広報戦略でしょうか?
そこで私たちが目を向けたいのは、まだ家づくりに関心のない潜在的な顧客層です。普段からSNSやブログに家づくりの専門的な情報に留まらない生活者目線の情報をコンスタントに更新することが、潜在的な顧客との日常的なつながりを持ち、あらかじめ信頼や安心を得ておくことで、いざ家を建てる・直すという時に「あ、そういえばあの工務店いいかも!?」と選んでもらうのです。
社長ブログよりも、生活者目線が得意なWeb女子の発信こそ救世主
多くのブログは、社長や現場に詳しい棟梁や現場監督が更新しています。ですから、自分の仕事のこだわりを逐一伝えることは自然な成り行きでしょう。ただし、それをまだ家づくりに興味のない人に興味を持って読んでもらうものにするのは、かなりの至難の技です。
ところで、Instagramで工務店とハッシュタグを検索すると、公開投稿数は168,740件(5/4現在)。この数からもわかるように、工務店の何らかの仕事やイベントの情報が、Instagramでも日々発信されています。最近では、Instagramを検索エンジンとして活用する人が増えてきました。写真投稿をメインとするSNSであるゆえに、検索すれば一瞬でイメージをつかめる手軽さがあります。
とはいえ、「うちもInstagramのアカウントを開設しましょうか」と言うと、社長たちは急に口ごもってしまいませんか。そこで、社内にいる若い世代の出番です。潜在的な顧客とのつながりを日常的につくりだすべく、彼女たちのソーシャルメディアの活用スキルと生活者目線を大いに発揮してもらうのです。
先に紹介した「Webびお養成塾」は、工務店内でSNSやソーシャルメディアを日常的に使いこなし、Webに強い若い社員を「Web女子」と称してWeb広報のスキルを身につけてもらう広報塾を立ち上げました。
愚直に丁寧に、地域に根ざした工務店の広報とは?
では、工務店が日常的に伝えることのできるコンテンツとは何でしょうか。それは、自社商品を紹介するだけではなく、その町での暮らしを紹介するということです。自社がどんな町にあり、どんな人たちとのつながりを持っているのか。それが何よりもの発信材料になるのではないでしょうか。独立自営工務店の多くが、地域と密接な関わりを持って仕事をしてきたとすれば、地域に根ざした工務店だからこそ伝えられる情報とは、地域情報に他なりません。
「住まいマガジン びお」では、全国の工務店とともに「ちいきのびお」というローカルメディアの取り組みを行っています。各工務店でSNSアカウントやブログカテゴリーを新設し、地域の旬な情報を伝えることで、日常的な潜在的な顧客との接点を探っています。
町で神出鬼没と噂のWeb女子。全国に広がる「ちいきのびお」
ある工務店では、二十四節気や七十二候といった古来のこよみに基づいて、地域で見かける季節の変化をInstagramで更新しています。また、ある工務店では、同じ地域内で活躍する30-40代の同世代経営者にインタビューをして、その人がどのように地域の中で仕事を続けているのか、生き様を自社ブログに掲載しています。
現代の歳時記を各工務店が伝えることは、工務店がその地域の文化や伝統の継承者であることを示すことになり、同じ地元で根をはる他社の取り組みを紹介することは、地域における豊かな人と人とのつながりがその工務店にはあることを自ずと知らせることができます。
どちらも、今後その町で暮らすことになるかもしれない顧客に対して、実際の生活のイメージを想像することを助け、Web女子の動きを通じて町や人と出会うきっかけを生み出します。そうした生活者目線の情報が、ふだん社長たちが得意とする家づくりの話題と結びついた時、あらためて工務店の存在が確かなものになるのではないでしょうか。
Web広報を学べる「Webびお養成塾」が5月に第3期開講!
「ちいきのびお」は私たちが企画・運営する、地域に根ざした工務店がWeb広報術を学ぶ「Webびお養成塾」の修了生が進めているものです。「Webびお養成塾」は、昨年から8月、12月と二度開催し、40名ほどの修了生を輩出しています。講師には、アートディレクターとして著名な(株)ドラフト代表の宮田識さんや、働き方研究家・プランニングディレクターでありリビングワールド代表の西村佳哲さんをはじめ、第一線で活躍する編集者・まちづくり専門家・Webデザイナー・写真家などを迎え、講座を開いてきました。
そこでの学びは、広報という枠組みにとらわれず、同業他社の人たちとの交流を通して自らの仕事を見つめ直し、モチベーションを高めることにもつながっていると修了生のインタビューでは語られました。
工務店従事者が学べる広報塾も数少ない中で、特にWebに特化したものはごく稀です。これからの時代を生き抜くために、地に足をつけた広報術を学びたい人は、ぜひこの5月に開催される「第3回Webびお養成塾」へご参加ください。
参考文献 (1) 平成28年通信利用動向調査
Webびお養成塾は、この5月に第3回目が開催されます。
工務店に勤務される広報担当の方、これから少しずつWeb広報に力を入れたい方など、ぜひご参加ください!
日時 5月23日(水)12:30集合~5月25日(金)15:00終了
場所 香川県丸亀市・三豊市