工務店の魅力を伝える仕事
第3回
キャッチコピーをつくる
前回は、会社のカタログ・パンフを作ったことをお伝えしました。
取材をし、言葉や文章にすることで、会社の物語を人に伝える広告ツールの一歩になりました。こうして広告企画担当という船をひとり漕ぎ始めました。
伝えるツールを作りはじめると、気になることや気づくことが出てくるものです。古いパンフレットに書かれてあった「Wood&Dream」というキャッチコピーは、展示会のチラシの左上にも小さく掲載されていました。カタログにも、色々な広告物やホームページにも。社長や部長に、「このWood&Dreamというのは、会社の理念やイメージに合わせて作られたものですか?」と尋ねてみたところ、「印刷屋さんに任せてる」ということでした。確かに、大して重要に見えない言葉なのかもしれないけれど、なんだか会社の特徴が込められていない言葉に感じる。しっくりこないなぁ。私の中のこの違和感が「よし。これを変えよう!」という起動力になりました。
広告には写真を使わないものがあります。地域の祭りの協賛、新聞の掲載、グループや会のホームページやリンクバナー。そんな写真やイラストの使えない告知シーンで必要なのが、キャッチコピーです。カタログを作る時に気づいたこの事をきっかけに、会社のキャッチコピーを生み出す事ができました。
まずは、社員の女子3名(設計と営業補佐の二人)を集めて、カタログのデザイナーさんと私、4人で付箋に会社のイメージを短い言葉で書き出していきました。それを一斉にホワイトボードに貼り集めて、重なった言葉を選別していきます。言葉の多数決をするわけです。そして同じ共通のイメージが重なるものを単純に並べる。「自然」「やさしい」「気持ちいい」「健康」こんな言葉は最後まで残りました。でも会社の特徴は何なのか、お客様にどんなイメージを持ってもらいたいか、このことを議論しながらさらに言葉を加えたりして、この言葉を並べる作業を繰り返しました。それで、ようやく煮詰まった言葉が2つ3つになったところで、デザイナーさんの外から見た意見を取り入れて決めました。
「森からはじまる木のここち」
これを、社名ロゴの前や、上に小さくつけることで、「会社のことは、このひとつでわかる」といった具合に印象づけていくことにしました。
表記する時は、平仮名なのか漢字なのか、カタカナなのか。ゴシックか明朝かまでこだわります。文字のシルエットで印象もかわるので丁寧にきめていきます。文字間や余白もそうです。そうやって決まったキャッチコピーは、浜松建設の脇役でありながらしっかりイメージを伝えてくれる大切な言葉になりました。
言葉ひとつを決めるのに、いちいち意味をそこに落としていく。注意深くバランスをとる作業、決め事の繰り返しを、チラシを作ったりするときに行っていきます。展示会のご案内を出す時のDMなどもそうです。でも、つい忘れてしまうのですが、広告の目的はカッコイイものを作るということではなく、興味をもってもらい集客するためにやっている仕事だということです。憧れたり、素敵と共感してもらえるブランドを作る目的と同時に、集客出来なければ「意味がないこだわり」に変わってしまう瞬間があるということです。広告もなかなか奥が深いと、いつも考えさせられます。ただし、この時間をかけたり、悩んで出来た成果物は見る人、読む人に不思議と伝わるんです。だから、手を抜かない。それが家を建てる時の姿勢でもあるはずだから、家を作る時のように、少しでも作り手の手がかりを残していきたいものですね。