工務店の魅力を伝える仕事

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キャッチコピーをつくる

前回は、会社のカタログ・パンフを作ったことをお伝えしました。
取材をし、言葉や文章にすることで、会社の物語を人に伝える広告ツールの一歩になりました。こうして広告企画担当という船をひとり漕ぎ始めました。

伝えるツールを作りはじめると、気になることや気づくことが出てくるものです。古いパンフレットに書かれてあった「Wood&Dream」というキャッチコピーは、展示会のチラシの左上にも小さく掲載されていました。カタログにも、色々な広告物やホームページにも。社長や部長に、「このWood&Dreamというのは、会社の理念やイメージに合わせて作られたものですか?」と尋ねてみたところ、「印刷屋さんに任せてる」ということでした。確かに、大して重要に見えない言葉なのかもしれないけれど、なんだか会社の特徴が込められていない言葉に感じる。しっくりこないなぁ。私の中のこの違和感が「よし。これを変えよう!」という起動力になりました。

広告には写真を使わないものがあります。地域の祭りの協賛、新聞の掲載、グループや会のホームページやリンクバナー。そんな写真やイラストの使えない告知シーンで必要なのが、キャッチコピーです。カタログを作る時に気づいたこの事をきっかけに、会社のキャッチコピーを生み出す事ができました。

WOOD & DREAM 浜松建設

以前のカタログと、新しく作ったモデルハウスのカタログ

まずは、社員の女子3名(設計と営業補佐の二人)を集めて、カタログのデザイナーさんと私、4人で付箋に会社のイメージを短い言葉で書き出していきました。それを一斉にホワイトボードに貼り集めて、重なった言葉を選別していきます。言葉の多数決をするわけです。そして同じ共通のイメージが重なるものを単純に並べる。「自然」「やさしい」「気持ちいい」「健康」こんな言葉は最後まで残りました。でも会社の特徴は何なのか、お客様にどんなイメージを持ってもらいたいか、このことを議論しながらさらに言葉を加えたりして、この言葉を並べる作業を繰り返しました。それで、ようやく煮詰まった言葉が2つ3つになったところで、デザイナーさんの外から見た意見を取り入れて決めました。

「森からはじまる木のここち」

これを、社名ロゴの前や、上に小さくつけることで、「会社のことは、このひとつでわかる」といった具合に印象づけていくことにしました。
表記する時は、平仮名なのか漢字なのか、カタカナなのか。ゴシックか明朝かまでこだわります。文字のシルエットで印象もかわるので丁寧にきめていきます。文字間や余白もそうです。そうやって決まったキャッチコピーは、浜松建設の脇役でありながらしっかりイメージを伝えてくれる大切な言葉になりました。

工務店のブレインストーミング

付箋をつかった打合せは他の打合せでも活用している

言葉ひとつを決めるのに、いちいち意味をそこに落としていく。注意深くバランスをとる作業、決め事の繰り返しを、チラシを作ったりするときに行っていきます。展示会のご案内を出す時のDMなどもそうです。でも、つい忘れてしまうのですが、広告の目的はカッコイイものを作るということではなく、興味をもってもらい集客するためにやっている仕事だということです。憧れたり、素敵と共感してもらえるブランドを作る目的と同時に、集客出来なければ「意味がないこだわり」に変わってしまう瞬間があるということです。広告もなかなか奥が深いと、いつも考えさせられます。ただし、この時間をかけたり、悩んで出来た成果物は見る人、読む人に不思議と伝わるんです。だから、手を抜かない。それが家を建てる時の姿勢でもあるはずだから、家を作る時のように、少しでも作り手の手がかりを残していきたいものですね。

著者について

村上比子

村上比子むらかみ・ともこ
「風の森」「風びより」の総括マネージャー

九州造形短期大学(現、九州産業大学造形短期大学部)卒業後、大手設計事務所勤務。企画コンペ専門の実務を経験し、工務店、コンサルティグ会社を経て、現在、株式会社浜松建設の企画運営マネージャーとして広報企画を担当。「風の森」「風びより」の運営ブランディングを行う。「大工の手づくり家具・モクモク」のデザイナーでもあり、「風びより」「風の森」で使われている家具やデザインをモクモクオリジナル商品として提供している。

連載について

工務店には広報が重要とわかりながらも、未だモデルケースや方法論などは明確にはない状況です。広報担当者は「孤独」に追い込まれていると『新建ハウジング vol.770』は伝えています。長崎の工務店で広報企画を担当されている村上さんのお仕事は、まさにこのテーマに対する一つのお手本のようでもあります。毎日長崎県内を縦横無尽に移動し、活躍されている村上さんが、これまでどのように広報の仕事を担当されてきたのか、教えていただきます。