まちづくりで住宅を選ぶ

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街を知ろう!

AgitÁgueda

とはいえ、いきなり何の指針もなく、街に出て行けばいいと読者を放り出すのはあまりにも無責任だと私も自覚しています。私は、街の魅力の研究をもう30年ぐらいし続けています。そういう点から、ある程度、読者の皆さんが街の魅力を知るうえでのヒントを示唆することができるかと思います。また、多くの人が魅力を感じる内外の街も紹介したいと思います。

私にも好きな街、あまり好きでない街があります。たとえば、アメリカではサンフランシスコが好きですが、ロスアンジェルスはあまり好きではありません。どちらの都市にも3年以上住んでいますが、愛着が全然、違います。しかし、ロスアンジェルスでもサウス・パサデナやサンタ・モニカという路面電車時代につくられた街は好きですが、オンタリオやアーバインといった戦後、宅地開発が進んだ街は好きではありません。どうして、そういう違いが生じるのか。それを考えることで、自分の街への潜在的な好みが浮かび上がってきます。

south pasadena

自動車社会の先端を走ってきたロスアンジェルスであるが、中にはサウス・パサデナのように個店がまだ頑張っている商店街が残っているところもある。最近では、路面電車が復活して、ヒューマン・スケールの街並みが復活しつつもあるのだ。筆者はこの街で少年時代の2年間を暮らしたが、ロスアンジェルスで生活しつつも徒歩と自転車で結構、街を探索することができたのは自動車が運転できない子どもにはラッキーであった。

ロスアンジェルスはアメリカで最初の高速道路が整備された街であり、自動車型の都市を初めて計画的に整備した都市です。したがって、土地の6割が道路か駐車場といった自動車のために利用されています。しかし、サウス・パサデナやサンタ・モニカは自動車が普及される以前につくられたので、道路はそれほど広くなく、また路面電車が走っていたので、その停車場の周辺にはちょっとした商店街のようなものが形成されていました。そのような歴史があるので、今でも数は少ないですがチェーン店ではない個店が営業していますし、街の歴史が感じられたりする空間があるのです。

つまり、ちょっとした街の個性が商店街にあるのです。そして、自分の街の好みによって、私はそういう個店や時間の積み重ねが感じられる景観に惹かれることを理解したりします。

あなたは、どんな街が好きな人格を有しているのでしょうか。街の好みを知ることで、自分探しをちょっとしてみるのも楽しいかと思います。

著者について

服部圭郎

服部圭郎はっとり・けいろう
龍谷大学政策学部教授
1963年東京都生まれ。東京大学工学部卒業、カリフォルニア大学環境デザイン学部で修士号取得。某民間シンクタンク勤務、明治学院大学経済学部教授を経て、現職。 専門は都市計画、地域研究、コミュニティ・デザイン、フィールドスタディ。 主な著書に『若者のためのまちづくり』『人間都市クリチバ』『衰退を克服したアメリカ中小都市のまちづくり』『ドイツ・縮小時代の都市デザイン』など。技術士(都市・地方計画)、博士(総合政策学)。