「ていねいな暮らし」カタログ
第14回
暮らし系雑誌における「暮らし」の描き方——ここまでのまとめ
この連載では、地域文化誌や『ku:nel』、『Lingkaran』、『天然生活』を中心に、21世紀に入ってからの「暮らし」の描かれ方を確認してきました。その他、『カメラ日和』で暮らし系雑誌の中核となる「ましかく写真」のことについて触れ、物の歴史から「本当」を読もうとする『d long life design』を軸に話を進めてきました。この後も、リトルプレスや移住にこだわった雑誌などを見ていきたいと考えているのですが、今回は閑話休題、これまで触れてきたことをまとめてみて、次からの話につなげたいと思います。
まずは、レイアウトについて。暮らし系雑誌の特徴として、華美な装飾は排除され、何よりも余白が多いことが挙げられます。「住まいマガジン びお」も余白多めかつ明朝体が基調となっていますが、「暮らしのまんなか」(第13回)まで余計なものを削いでいくとシンプルなレイアウトとなるようです。そして、短い記事タイトルにも句読点がつけられるなど、「休符」の多さも今のライフスタイル誌でよく使われる手法です。
次に写真についてですが、写真は均一な正方形が用いられることが多いのが特徴です。今ですとInstagramとの関連も言えそうですが、今回取り上げた暮らし系雑誌創刊当時はまだSNSはなかったので、写真史的に語ることのできる流れと、正方形が備える「美しさ」(第9回)といった認知的な理由がここにあるようです。露光は多め、かつ背景をぼんやりとさせ、被写体・物に優劣をつけない姿勢も見られます。記事の内容を直接説明しない少しズレたものも扱われていました(第5回)。
最後に内容についてですが、4つの傾向があると考えています。一つは『ku:nel』に代表される日常の雰囲気を旅人のような目線と先に挙げた「レイアウト」で描き取ろうとするもの。もう一つは、『Lingkaran』のような体の内面にも内容を寄せていくもの。3つ目は、エコロジーやロハスといった環境思想との関連で暮らしを捉え直そうというもの。最後に、次回触れようと思いますが移住に関するもの。もちろんこれらが組み合わせられて雑誌が作られていくわけですが、一口に「暮らし」という時にどのような背景から述べようとしているかという点はとても重要です。地域文化誌もこの4つを中心とした傾向を持つように思われます。
このような暮らし系雑誌のレイアウト・写真・内容を念頭に置きつつ、これからご紹介する暮らし系雑誌がこれらの系譜にどのように沿い、またズレているのか、そういったことに気をつけながら次の暮らし系雑誌を見てみましょう!