まちの中の建築スケッチ
第14回
宮城県美術館
——庭と美術館——
仙台では、日本建築家協会宮城地域会がアーキテクツウィークをメディアテーク1階で毎年開催している。子供たちによる公園計画をはじめ、建築にかかわるさまざまな話題が取り上げられているのだが、「建築基本法の制定」も毎回テーマに取り上げてもらって、すでに4回目のシンポジウムとなった。成長経済社会ではそれなりの役割を果たしてきた建築基準法と建築確認制度であるが、そろそろ持続可能社会にあってストックの評価も含め裁量性や事前協議などの制度導入も可能とする制度が求められている。全国一律の敷地の中だけを考えた基準が建築を貧しくしている。地域文化を生かすにあたり建築家の専門家としての役割などについて幅広い議論が展開された。おりしも市庁舎の基本計画のときで多くの市民の望む建築をどのようにして可能にするかも、建築制度にからむ課題である。新しい考え方の法の制定ともなると、多くの議員の理解と熱意がないと実現しないが、地方からの声の高まりが大きな力となる。
このところ、建築スケッチではいくつか近代建築を訪ねたので、仙台では、その源流とも言える前川國男(1905-1986)の作品をと思って、シンポジウムの始まる前に宮城県美術館を訪ねた。広瀬川に近い敷地にゆったりとした空間で構成された美術館である。そして隣接して前川國男の弟子の大宇根弘司氏によって佐藤忠良記念館が増築されている。あまり時間もないことからこちらに入ると、ブロンズ像が多くは女性のヌードであるが、さまざまな表情とポーズで佇んでおり、見ごたえもあった。なによりも、庭に面した部屋には大きなガラスの外にも同様にブロンズ像が置いてあって、青空のもと常緑の深緑と紅葉の対比の中に、室内とテラスとの自然なつながりが感じられ、めったにないタイミングで塑像展を味わうことができた。
せっかくなので、庭に回ると、佐藤忠良記念館から下る細い道と本館からダイナミックに階段で下る開けた空間があって、振り返って美術館を眺められる。今回はここでスケッチを試みることにした。逆光の中で、水平の強調されたタイル貼りの建物はほとんど見えない絵になってしまったが、すでに葉の落ちた木々が多いものの、黄葉や紅葉がアクセントとなり、特別大きくはないが立体的に設計された庭園になっていることがわかった。
また本館を抜けてエントランスに向かうと、床のタイルと、天井のボールト状の水平線を柱で区切った四角い枠内に、アプローチ空間のそれぞれのショットが浮かび、美術館を訪れるときの印象と異なり、なかなかの演出がされていると思った。
外観は四角い箱の落ち着いた近代建築であるが、そして美術館としても見やすい部屋の構成であるが、とにかくゆったりしたアプローチやロビーの空間が外部とのつながりを自然にしつらえているのが、とても良かった。