住まいのグラフィティ
Vol.53 元町の家
日本ハウジング株式会社
お施主様と私は通常の住宅としての基本性能を維持して、デザイン性と快適性をどれだけ高い次元で実現させるかを話し合った。必ずやここでの解答が普遍性に到達すると信じて。
何度かのディスカッションを経て、3つのゾーンを組み合わせる案に落ち着いた。
3つのゾーンはそれぞれ、生活する場、書斎、ハナレといった違う表情を持っている。
各ゾーンからは小さな庭が見え、家の中を歩くと各所にある小さな庭が現れては消え、現れては消えてと違った表情の緑の庭を愉しむことができる。
生活する場は吹き抜けのある光が降り注ぐゾーン。書斎ゾーンは平屋で、住居ゾーンに斜めにドッキングしている。こうすると室内から見たときに「斜めのパースペクティブ」が生まれ広がり感が生まれる。
ハナレの和室は書斎ゾーンからのアプローチ。ハナレといっても同一屋根の下なので、雨でも行き来ができる。同じ構造躯体で、ハナレなのだ。
2階建ての生活の場はプライベートであるから奥に配した後景、書斎ゾーンはパブリックゾーンとして前に配した前景となり、外観は奥行きのある佇まいを見せている。
![植物が沢山植えられた元町の家エントランス](https://bionet.jp/wp-content/uploads/2020/03/nihonhousingmotomachinoieouter.jpg)
道路から玄関までのアプローチ。奥がどうなっているのか思わず覗きたくなる少し隠れた所に玄関があります。夏は緑が茂り住宅街の中の小さな森となり、鳥が訪れる場所に。
![リビングダイニングから一段下がったキッチンまで見渡せる](https://bionet.jp/wp-content/uploads/2020/03/nihonhousingmotomachinoieliving.jpg)
みんなの集うリビング・ダイニング・キッチン。キッチンの床を一段下げてみんなの目線の高さを合わせる工夫がされています。ご飯を食べ終わった後のくつろぎタイム、子どもたちの宿題の時間、とにかくいつでも家族が一緒に過ごせる大切な空間です。
書斎からリビングへ通じる廊下。この場所がこの家で一番動線が長い所。そんな場所には必ず視線が抜けるよう外へと続く窓があります。
![書斎兼多目的ルーム](https://bionet.jp/wp-content/uploads/2020/03/nihonhousingmotomachinoiestudyroom.jpg)
もともとは仕事場として設計された書斎ですが、今では3人のお子さんが遊ぶ場に。木工作をしたり、絵を書いたり、子どもたちの創作活動の場になりました。
- 離れの和室。下窓からは中庭が見え落ち着いた空間になっています。畳は大分自慢の七島藺を使っています。
- 離れと書斎をつなぐ廊下、ウッドデッキ。ここがこの家に入る第2の入り口。薪ストーブの薪棚にも通じています。この辺を縄張りにしている小さなお客さんもこの入り口から入ってきます。
![夕方に部屋の明かりが漏れ美しい外観の家](https://bionet.jp/wp-content/uploads/2020/03/nihonhousingmotomachinoiegaikan.jpg)
夕方の家。道路の通行人から中が除けないように板塀が、でも閉塞感を感じないように絶妙な隙間を板と板の間につくっています。見えるようで、見えない、外と中がつながっているようようでつながっていない、この家のテーマです。