びおの珠玉記事
第78回
瀬戸の漁港
香川県のあまり注目されていない財産の一つに「漁港」があります。豊かな漁場瀬戸内海をバックに香川の漁業は栄えました。「播磨灘」「備讃瀬戸」「燧灘(ひうちなだ)」という3つの海域に面し、それぞれの海岸線は複雑に入り組み起伏に富む海底は天然礁をつくり、多数の島々は、潮流の緩急に変化を与え、海水は周辺地域の河川から流入した栄養分のある水をたたえています。瀬戸内海は魚類が生息するのにうってつけの自然・地理条件をそなえているのです。
複雑に入り組んだ海外線には数多くの小さな漁港があります。それらの漁港は昔ながらの石積みの防波堤で入り江をつくり、静かな水面に漁船が浮かぶ光景は、青い海と空、小高い山と相まって瀬戸内海の漁港独特の風景を醸し出しています。そこには世間の喧噪から離れた一種独特のスローな空気感が漂っています。
今、昔ながらの石積の防波堤がコンクリートや魚礁にとって替わられようとしています。箱庭のような美しい景色としての漁港を後世に残していきたいものです…。
文:菅徹夫(びお編集委員・菅組代表取締役)
菅組:http://www.suga-ac.co.jp/
ブログ:ShopMasterのひとりごとhttp://sugakun.exblog.jp/
※リニューアルする前の住まいマガジンびおから珠玉記事を再掲載しました。
(2012年11月12日の過去記事より再掲載)