びおの珠玉記事

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森里海から・ニホンタンポポ

ニホンタンポポ

ニホンタンポポ

日本の春の代表的な花と言えば・・・タンポポを連想する人も多いのではないでしょうか。
しかしタンポポにもセイヨウタンポポと呼ばれる外来種のタンポポがあります。日本古来のニホンタンポポには、さらにカンサイタンポポ、カントウタンポポ、エゾタンポポ、シナノタンポポ、トウカイタンポポ、シロバナタンポポなど、20種類以上が存在するそうです。ニホンタンポポは日本の春の象徴でもあり、3月終わり頃から4月にかけて開花します。しかしセイヨウタンポポには季節感がなく一年中何度でも花を付けます。またセイヨウタンポポは受粉しなくても種子を作ることができるため繁殖力が非常に強いのです。いまや日本のタンポポのうち半数以上をセイヨウタンポポが占めているという調査結果もあるほどです。

ニホンタンポポとセイヨウタンポポは生息場所で棲み分けができているという説もあるようですが、基本的には競合する種であって共存できるものではありません。セイヨウタンポポが増えることでニホンタンポポはその数を減らしていると言えます。また近年ニホンタンポポとセイヨウタンポポの間で交雑が起こっており、遺伝子の攪乱という問題も発生しているようです。

生物多様性を維持することの重要性は、近年少しずつ理解が拡がっているようですが「外来種」は生物多様性(遺伝子の多様性を含めて)を高めることにはなりません。生物多様性を守るためには日本古来の在来種をしっかり保護することが重要です。遺伝子の攪乱などによって多様性が失われる可能性も含めて、外来種であるセイヨウタンポポは駆除すべき対象といえるでしょう。

ニホンタンポポとセイヨウタンポポは見た目ではほとんど区別がつきません。その違いは花の裏側にあります。花びらの裏側にある総苞片(そうほうべん)と呼ばれるものが、セイヨウタンポポは反り返っており、ニホンタンポポは反り返らずピッタリと閉じています。(写真参照)

ニホンタンポポを横から見たニホンタンポポの総苞片(花びらにピタッとくっついています)

セイヨウタンポポ

セイヨウタンポポの総苞片(反り返っています)[出典:http://linghum.blog119.fc2.com/ フリー素材画集より]

3月、4月はニホンタンポポとセイヨウタンポポの両方が花を付ける時期です。野に咲くタンポポが正しく日本の四季を伝えるニホンタンポポなのか、季節感のない駆除すべきセイヨウタンポポなのか、是非手にとって確認してみてください。香川県は全国でも珍しく在来種のニホンタンポポが多い地域のようです。まだまだ残る本来の日本のタンポポを楽しみましょう。

ニホンタンポポがたくさん群生するニホンタンポポ(琴平町界隈)

文:菅徹夫(びお編集委員・菅組代表取締役)
菅組:http://www.suga-ac.co.jp/
ブログ:ShopMasterのひとりごとhttp://sugakun.exblog.jp/

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから珠玉記事を再掲載しました。
(2017年03月05日の過去記事より再掲載)

著者について

菅徹夫

菅徹夫すが・てつお
1961年香川県仁尾町生まれ。神戸大学工学部建築学科を卒業後、同大学院修士課程にて西洋建築史専攻(向井正也研究室)。5年間、東京の中堅ゼネコン設計部で勤務したのち1990年に香川にUターン。現在は株式会社菅組 代表取締役社長。仕事の傍ら「ベーハ小屋研究会」を立ち上げるなど、地域資源の発掘などのユニークな活動も行う。
一級建築士、ビオトープ管理士

連載について

住まいマガジンびおが2017年10月1日にリニューアルする前の、住まい新聞びお時代の珠玉記事を再掲載します。