びおの珠玉記事
第127回
夏も近づく八十八夜
今年もやってきました、新茶の季節!
※リニューアルする前の住まいマガジンびおから珠玉記事を再掲載しました。
(2009年04月20日・2010年04月20日の過去記事より再掲載)
二十四節気の「穀雨」に入りました。
この穀雨の終わる頃、立春から数えて八十八日目の日、雑節の「八十八夜」となります。
野にも山にも若葉が茂る
あれに見えるは茶摘みじゃないか
茜襷に菅の笠
おなじみの小学校唱歌です。立春から数えて八十八日目は、立夏の3日前です。それで「夏も近づく」といったのです。
この時期は、遅霜が発生します。「八十八夜の別れ霜」「八十八夜の泣き霜」「さつき寒」などと言われます。急に気温が下がって、農作物や果樹の栽培に大きな被害を与えることがあります。
八十八夜は日本独自の雑節で、まさにお茶のためにつけられた雑節です。雑節とは、二十四節気とは別に、季節の変化の目安となる特定の日をいいます。節分・入梅・半夏生・二百十日・土用・彼岸などがあります。二百十日は立春から数えて210日目で、台風がくる時期にあたります。
八十八夜に摘んだお茶は上質といわれますが、実際には、茶産地の気候によって左右されますので、正確に八十八夜に従っているわけではありません。
八十八夜に摘まれるお茶が、古来より不老長寿の縁起物とされるのは、一番茶(新茶)だからです。お茶の新芽には、冬を越えて蓄えられた成分が溢れており、お茶の旨味のもととされるテアニンなどの成分が豊富に含まれているからです。
日常、お茶を飲むようになったのは大正時代から
今では緑茶を飲むのは普通のことだけど、日常、お茶を飲むようになったのは大正時代からだといわれています。お茶の歴史は1200年になります。お茶は、平安時代には貴重品で、貴族の儀式や行事の時に飲まれるものでした。その当時は、茶を火にあぶってから粉末にして、湯に入れて煮たとのこと。江戸時代になって煎茶が普及し、庶民の間にも広まりました。しかし、庶民の口には遠く、大正時代までは特別の日に飲むものでした。
新茶と一番茶は同じ
新茶は、その年の最初に生育した新芽を摘み採ってつくったお茶をいいます。「新茶」と「一番茶」とは同じお茶のことで、呼び方が違うだけです。一番茶は、二番茶、三番茶と対比して使われます。一番茶(新茶)は、二番茶、三番茶に比べて、カテキンやカフェインが少なく、旨み、甘みの成分であるアミノ酸(テアニン)が多いのが特長です。
八十八夜は新茶の季節
毎年、新茶の声を聞くと「今年も新茶を飲まなくちゃ」と何やらわくわく、そわそわします。
八十八夜の日に摘み採られたお茶を飲むと、一年間無病息災で元気に過ごせるとか、長生きできる等、縁起のよい言い伝えもあります。
お茶の木は、葉の摘み採りが終わった前年の秋から、しっかりと養分を蓄えます。そしてこの季節に、養分をたっぷり含んだみずみずしい新芽を吹き出します。
その新芽を摘み採ってつくったお茶が、新茶(一番茶)です。
「新茶」という呼び方には、その年の初もの、という意味が込められています。
新茶には、新茶ならではのさわやかな高い香りがあります。
また、その後に摘まれる二番茶・三番茶・四番茶に比べて、カテキンやカフェインが少ないため苦みや渋みが弱く、旨みや甘みの成分であるアミノ酸(テアニン)が多く含まれています。
旬のこの時期だけの風味。新茶は、香りと味において、最高の品質とされます。
おいしいのも納得です。
新茶のおいしい淹れ方
そのおいしい新茶を、さらにおいしくいただくための淹れ方のコツがあるようですので、ご紹介します。
◆水道水はよく沸騰させて使う。こだわりたい方は「軟水」のミネラルウォーターを。水道水は、よく沸騰させて、カルキを抜いてから使います。
さらにこだわりたい方は… 緑茶を淹れるときには、カルシウムやマグネシウムが多く含まれる「硬水」より、それらが少ない「軟水」の方が適しているそうですので、軟水のミネラルウォーターを使うとよいでしょう。(国産のミネラルウォーターは、ほとんどが軟水とのこと。)
◆お湯は少し冷ましてから入れる(70~80℃くらい)
新茶は独特の香りを前面に出すために仕上げの火入れが浅く、そのためお湯の温度が高いと、いっぺんに風味が強く出てきつい味になってしまうのだそうです。
また逆に(ポットで保温しておいたお湯を使う場合など)温度が低すぎると、香りが弱くなってしまうそうです。
お湯の温度を70~80℃くらいにします。
沸騰したお湯を一度湯呑み茶碗に注いでから、急須に入れます。(こうすると、お湯は約80℃前後になります。)
あるいは、沸騰したお湯を空の急須に注ぎ、それを一度湯呑み茶碗に移してから、再び(茶葉の入った)急須に入れます。(こうすると、65~70℃くらいになります。)
お湯を冷ますと同時に、器を温めることもできます。
また、「湯冷まし」という、湯を冷ますのに用いる器もあります。
80℃くらいの比較的高い温度で淹れると、新茶のさわやかな香りとほどよい渋みを楽しむことができ、70℃くらいまで冷ますと、豊かな旨みを楽しむことができるのだとか。
◆茶葉の量をやや多めにする
新茶の場合は、茶葉を少し多めにするのがおいしく淹れるコツなのだそうです。
◆抽出時間は短めにする
新茶は、普通の煎茶などに比べて、短い抽出時間で淹れます(約40秒~60秒)。
抽出時間を長くすると、渋みの成分が出すぎて、新茶の風味を損ねてしまうそうです。
◆最後の1滴まで注ぎ切る
緑茶は、最後の1滴に旨みの成分が詰まっているといわれます。「ゴールデンドロップ」とも呼ばれています。
ですので、最後の1滴まで注ぎ切りましょう。
また、最後の1滴まで注ぎ切ることで、2煎目もおいしく淹れられるのだそうです。
◆2煎目以降は…
1煎目を淹れた後、急須をポンポンと叩き、茶葉を急須の真ん中に移動させ、中が蒸れないように蓋を開けておくとよいのだとか。
そして2煎目は、お湯の温度を一煎目より高くし、抽出時間も短めにして、すぐに湯呑み茶碗に注ぎます。
3煎目は、さらに高い温度のお湯で、短い抽出時間で淹れるとよいそうです。
◆番外編:白い湯呑み茶碗を使う
湯呑み茶碗は、中が白いものを使うと、新茶の美しい色を目で楽しむこともできて、よりおいしくいただけるのではないでしょうか。
こちらをご参考に、今年も、新茶のおいしさを満喫していただけたらと思います。
香り高くおいしい新茶をいただくと、元気がわいてくるような気がします!
「八十八夜の別れ霜」
さて、八十八夜に関して、「八十八夜の別れ霜」「八十八夜の忘れ霜」などの言葉があります。
これは3月中旬から5月上旬頃にかけて、暖かくなってきた後で急に気温が下がって生ずる遅霜(晩霜)のことです。遅霜が農作物に被害を与えることを警戒した言葉でもあります。
この時期は、農作物の多くが新芽を出したり、育ちはじめたばかりで霜の影響を受けやすく、遅霜は農作物に大きな被害を与えます。
そして八十八夜が過ぎれば、霜が降りることは少なくなり、気候も安定する、といわれてきました。なかなかそうもいかない、ということもあるようですが。
八十八夜は昔から農家にとって大切な日で、農作業の目安とされ、農家はこの頃から種まき、苗代のもみまき、茶摘み、蚕の掃き立てなど、本格的に農事に取りかかりました。
茶は、凍霜害により大きな被害を受けます。特に新茶は、古い葉に比べて薄く柔らかいため、被害を受けやすいそうです。
凍霜害は、3月中旬から5月上旬までの、新茶の新芽の萌芽から摘み採りまでの時期に発生します。時期や程度により差がありますが、摘み採りが近くなって凍霜害に遭うと、一番茶の収量は大幅に影響を受け、その年の生産に大打撃を受けるのだそうです。
このため、凍霜害を防ぐために、被覆法(棚がけ、トンネルがけ)、送風法(防霜ファン)、散水氷結法(スプリンクラー)など、いろいろな防霜対策が行われています。
また、お茶どころである静岡県では、静岡地方気象台が「遅霜予報」を行っています。
3月15日から5月10日までの間、1日2回、県内8か所の予想最低気温を基に、翌日の朝に霜の降りる可能性があるかどうかを発表します。
今の季節、静岡県の天気予報では、当たり前のように「遅霜予報」が流れます。
しかし、静岡では2010年、3月30日未明から朝にかけての厳しい冷え込みにより、茶が凍霜害の大きな被害を受けました。
その他にも、全国各地で霜害があったようです。
普段、当たり前のように飲んでいるお茶。
そのお茶を、苦労しながら丹精込めて作ってくれている生産者の方がいるということを、新茶の季節に改めて思いました。
「びお」編集部があるのは、お茶どころ静岡県。
静岡県浜松市に住む記者の、お茶どころならでは?のエピソードをご紹介。
それは昨年2009年の5月頃のこと。
買い物にホームセンターを訪れた記者は、あるものに目を奪われました。
特設コーナーが設けられていて、そこには「新茶」の文字が入った茶筒、箱などが大量に並べられていました。中にお茶の葉は入っていません。
はじめは「?」と思ったのですが、すぐに「ああ」と合点がいきました。
これはきっと、お茶を作っている家、それも専業ではなくて、自分の家で飲む分のお茶を自分の家で作っているというくらいの規模で、お茶を作っている家のためのもので、これを買い自分の家で作った新茶を詰めて、親しい方に贈ったりするのではないでしょうか。
それまでは、ホームセンターで「新茶」の文字が入った茶筒や箱が売られているなんて全く知らなかったので、驚きました。さすがお茶どころ!
我が家ではお茶を作っていませんが、ちょうど茶筒を探していたところだったので1つ購入し、使っています。今、中に入っているのは新茶ではありませんが…。
次は、数年前の話です。
街頭で、よく広告が入ったポケットティッシュを配っていますよね。
あれと同じ感じで、新茶を配っているのに出くわしたことがあります。(新茶が入った袋は、さすがに小さかったですが。)新茶の通信販売の案内が添えられていました。
「新茶を無料で配ってるなんて!」と驚きましが、嬉々として受け取り、帰宅して早速に新茶を楽しみました。お茶を2回淹れられるくらいの量でした。
街頭で配っていて受け取ったもので、これまでで一番うれしかったものです。
最後は、Webで新茶について調べていて知ったことです。
最近、静岡県では「茶神・888」(サジン・ハチジュウハチヤー)なる“お茶のヒーロー”が活動しているようです!
静岡県出身の若手芸術家が100万円余りをかけて製作し、友人がマネジャーを務めているのだとか。
「八十八夜」つながりで、ご紹介しました。
http://sajin888.com/