びおの珠玉記事
第135回
嫌われるばかりではない?紫外線
※リニューアルする前の住まいマガジンびおから珠玉記事を再掲載しました。
(2009年05月21日の過去記事より再掲載)
紫外線は大切
この季節になると日中暖かくて、外出する時間も増えてくることだと思います。ウォーキングやジョギングしている人々を良く目にするようになるのもこの季節くらいからですね。まだ暑くはないのため、気にすることは少ないかもしれませんが、この頃から紫外線(Ultraviolet=UV)量はとても多くなってきているんです(5月~8月)。
紫外線がとても嫌われている存在だということは皆さん良くご存知だと思います。
人体における紫外線の影響は主に皮膚と目に現れます。皮膚の場合、日焼け・シミ・しわ・皮膚がん等、目の場合は角膜炎・翼状片・白内障等の症状をもたらします。オーストラリアでは、国家をあげて紫外線対策に取り組んでいる程です。
しかし、紫外線は人やその他の動物が生きていく上で大切な役割を果たしているって聞いた事はありませんか。
たとえば、猫。日向ぼっこしながら毛繕いをしている姿は誰もが見覚えのある光景だと思います。でもそれはただ単に猫がきれい好きだからというだけではありません。実は紫外線を浴びることにより、体の表面にビタミンDが作られ、それをなめることで体内に取り込んでいるというのです。
もうひとつ、池などに住んでいるカメも日光浴が大好きです。暖かくなってくると、岩や浮き草の上に折り重なって甲羅干ししている姿をしばしば目にします。理由として、紫外線の持つ殺菌作用によって皮膚病や寄生虫から体を守るためや、脱皮促進という事があります。また、カメにしても紫外線を浴びて体内でビタミンDを生成しているのです。そして、それは人にも同じことが言えます。紫外線には、体内でのビタミンD生成を助ける働きがあるのです。
ビタミンDとは
ビタミンDは、丈夫で健康な骨を作る働きをします。不足してしまうと、クル病(成長期の骨格異常で主な症状として脊椎や四肢骨の湾曲や変形がおこる)や骨軟化症を引き起こします。骨粗鬆症(骨の組織の密度が低下して骨折しやすくなる状態)の原因のひとつとも考えられています。
ビタミンDは紫外線を浴びるだけでなく、食物からの摂取によって補う事ができます。魚類(脂の乗った魚。鮭、イワシなど)やきのこ類(きくらげ・まつたけなど)には多く含まれています。
ただ、潜水艦の乗組員(全く日を浴びない状況下)に、1日に必要なビタミンDを充分に服用させても、血中ビタミンD濃度は正常値を下回ったという例があります。食事のみでのビタミンD摂取だけでは不足しやすいため、日光による合成も非常に大切なのです。
(ビタミンDの過剰摂取はビタミンD過剰症を招く恐れがあります)
https://bionet.jp/2023/02/18/solar02/
日光浴は何分間すれば良いの
ではいったいどのくらいの日光浴が必要なのでしょうか。
たとえば標高の高い場所では空気が薄いため紫外線量は多いですし、緯度が低くなる(赤道付近に近づく)につれて、同様に紫外線は強くなります。季節によっても変わってきます。一概にして言う事はできないのですが、日本では「両手の甲くらいの面積が15分間日光にあたる程度、または日陰で30分間くらい過ごす程度で、食品から平均的に摂取されるビタミンDとあわせて十分なビタミンDが供給されるものと思われます。 ※(環境省「紫外線保健指導マニュアル」)より」
紫外線の強い季節は朝や夕方に、冬場は少し長めにするといった具合に調節します。要するに、日焼けをするほどの日光浴は必要はなく、普段昼間に外出するような人は、意識して日光浴をする必要はないということです。
人や猫、カメにとっても生きてく上でとても必要なのもの。だけど、必要以上に浴びると身体に大きな悪影響を与えてしまいます。「薬」と「毒」は紙一重とは良く言いますが、紫外線もその一つと言えるのではないでしょうか。