びおの珠玉記事
第134回
今日は冷蔵庫の日
※リニューアルする前の住まいマガジンびおから珠玉記事を再掲載しました。
(2009年06月21日の過去記事より再掲載)
冷蔵庫の日とは
夏至の日は、冷蔵庫の日。「びお」が勝手に決めちゃった日ではありません。
暑く、湿度も高くなり、食品が傷みやすくなる季節であることから、冷蔵庫を点検しましょう、ということで、日本電機工業会が制定した日です。
冷蔵庫の歴史
家庭に電気式の冷蔵庫が普及しはじめたのは、昭和30年代。カラーテレビ、洗濯機とならんで「三種の神器」ともてはやされました。
それ以前の冷蔵庫は、氷屋さんから買って来た、切り出した氷で冷やすものでした。
それより昔は、冬の間に雪や氷を集めたり、高山から取って来たりした雪や氷を涼しい蔵に集めておいたりしていましたが、氷は高価なもので、庶民には簡単には手に入りませんでした。
氷へのあこがれから、「水無月」という、氷を模した菓子も生まれています。
以前は大変な「冷やす」という行為ですが、今では手軽にどこの家庭でも出来るようになりました。
一般的な家庭用の冷蔵庫は、コンプレッサーで圧縮した冷媒を循環させて庫内を冷やす「気化圧縮型」です。
動作するとコンプレッサーが発熱し、熱を出します。冷蔵庫の裏側が温かいのはこのためです。また、冷媒には以前フロンが使われていました。ご存知のようにフロンはオゾン層を破壊し、温室効果ガスでもあります。
日本では特定フロンの生産や使用は禁止になっていますが、古い冷蔵庫にはフロンが使われており、不当な廃棄をするとフロンが流出してしまいます。また、それにかわって使用されて来た代替フロンも、温室効果の高いガスであることや、使用時の漏洩も当初の想定の2倍ほど大気中に漏れていることがわかり、対策が急がれています。
こうした特定フロンや代替フロンを使わないノンフロン冷蔵庫も生まれています。
国内メーカーの場合、扉の内側のラベルが緑色なら、ノンフロン冷蔵庫です。
家庭で簡単に冷やす、という行為の裏には、こうした技術やその課題が隠れているのですね。冷蔵庫を選ぶときには、部屋数や大きさだけでなく、こうしたことも気にしてみると、違った選択肢も見えるかもしれません。
突撃、お宅の冷蔵庫
さて、3件のお宅の冷蔵庫を、撮影させてもらいました。
事前予告や片付ける余地なしの、いきなり撮影です。
サンプルは以下の三つ。
- A:夫婦二人(共働き)
- B:夫婦二人(自営業)
- C:夫婦二人(会社員+専業主婦)+子ども二人
なかなか他所のおうちの冷蔵庫を覗く機会はありませんよね。さあ、ご開帳!
Aさん 夫婦二人(共働き)
Aさん夫婦は共働き。毎朝お弁当を作っています。
Bさん 夫婦二人(自営業)
Bさん夫婦は飲食店を営んでおり、食事は店舗でとることが多く、家庭の冷蔵庫はあまり使っていないそうです。
Cさん 夫婦と子ども二人の四人暮らし
朝、夫と子どもの弁当を作っています。
総評:
みなさん思いのほかスッキリしていて、少し拍子抜けというのが正直な感想です。もっとぎっしりつまっていたり、捨てたいと思ってもまた押し込んでしまうような、見たくないものもほとんど見当たりませんでした。
もちろん家の食材がこれですべて、ということではありません。野菜や調味料に関しては、冷蔵庫以外に収納してあるものもありましたし、曜日や時間帯によっても差があるでしょう。
拝見して感じたのは、冷蔵庫の部屋毎の温度差をあまり活かしていないということと、「買ってきた材料」か「食べかけ・食べ残し」がほとんどで、「下ごしらえ」をしたものや、常備菜の類が少なかったことです。それと、ちょっと残念なのは、「旬」のものではないものも、多いですね。冷蔵庫の存在が、「旬」というものを遠ざけた大きな要因には間違いありません。
冷蔵庫・各部屋の温度と適した食材
冷蔵庫の中の温度って何度ぐらいか知っていますか?
設定温度によっても変わりますが、一般の冷蔵室が3〜5度、ドアポケットは6〜9度、チルド室は0度、パーシャル室-3度、野菜室は5〜7度、冷凍室は-18度程度です。
冷蔵室と同じ部屋のドアポケットでも、3〜4度温度が違います。
たとえばCさんのお宅では、調味料は冷蔵室にあったり、ドアポケットに入っていたりしました。理由はとくになく、空いているところに突っ込んでいるだけだそうです。
Bさんのお宅では、野菜室と冷蔵室の区別もほとんどないようでした。
最近の冷蔵庫では、通常の冷凍室よりさらに冷える部屋があったり、真空になる部屋があったりと、温かいものが保存出来たりと、消費者が想像もしなかったような機能がついています。
カタログ上の謳い文句としては必要な機能かもしれませんが、今回見せていただいた家庭の例をみると、消費者側に、それらを使いこなす技術は伴っていない様にも見えます。冷蔵庫は、消費者を置き去りにして、恐竜的進化を遂げているといえるかもしれません。
仕切られた空間、目的が限定された空間
今回の冷蔵庫の例を見ると、あまりたくさんのものが入っておらず、大きな冷蔵庫ではなくてもよいのでは、という印象をうけました。
もちろん大きな冷蔵庫が必要な家庭もあるでしょう。しかし、冷蔵庫はそうそう買い替えるものでなく、まして小さいものに買い替える、というのは、勇気がいることなのかもしれません。
また、現在は、大きな冷蔵庫のほうがコストパフォーマンスが高いケースが多く、必ずしも大型製品を不要と断じることも出来ません。
仕切られ過ぎ、目的を決められた部屋は使いにくい。
小さくて省エネルギーのものがほしい。
家族が減ったから、こんなに大きくなくていい。
目的別の部屋がたくさんあっても使いこなせないなら、大空間があって、間仕切りを自分で動かせる方がいい…
冷蔵庫に対しての要望は、なんだか住宅への要望と似ているような気もします。
食品ロス率と冷蔵庫
下のグラフは、日本の家庭における食品ロス率です。
食品ロス率とは、手に入れたけど食べずに捨てた食品の重量で見た割合です。
「過剰除去」は、皮むきなどで、本来食べられるところまで過剰に捨ててしまったもの。
「直接廃棄」は、賞味期限切れ等で、食卓にのぼらずに捨てられるもの。
食べずに捨ててしまう食品が、1kgあたり40g近くあるということです。
冷蔵庫に入れっぱなしにしていて、気がついたら消費期限が来ていた、という経験、ありませんか?
これは、冷蔵庫が「買って来た食品を貯蔵しておくところ」になっているために起こる現象なのかもしれません。
ちょっと、目先を変えてみませんか?
スーパーマーケットで買って来た食材を、冷蔵庫に保管する。食べるときに食材を出して来て調理する。
一般的な使い方かもしれません。
言ってみれば、自宅の冷蔵庫は、スーパーマーケットの出先機関のようなものでしょうか。
でも、良いか悪いかは別として、今は深夜でも営業しているスーパーマーケットも多く、その気になれば食品はいつでも手に入ります。
それを、大型冷蔵庫をレンタルしているようなものだと考えて、なんでもかんでも買いためない。
買いためなければ、捨てられる食品も減ります。
先の3家族の冷蔵庫の例でも感じましたが、お弁当を作っている家庭にも関わらず、常備菜や下ごしらえをしたものがほとんどありませんでした。
朝、慌ててお弁当をつくったり、夜の残りを取っておいて翌朝出して来たり、という具合でしょう。
でも、せっかく我が家に「食品を保存しやすい装置」があるのですから、何も買って来たままの状態ではなく、自分の都合のいい状態にして保存することで、「スーパーマーケットの出先機関」から、「料理の過程を途中保存(セーブ)する」というようなことに活用してはどうでしょうか。
休日や時間のあるとき、気分がノっているときに、出来るところまですすめておいて、「途中保存」。
必要になったときに「再開」。
朝はもちろん、共働きで、帰ってからの夕食の支度も短くできるでしょう。
冷蔵だけでなく、冷凍ももちろん使えます。場合によっては、食べられる寸前まで作ってしまって冷凍、お弁当には凍ったまま持っていく、ということも。
こんなこと、あたり前のようにやっている人もいるでしょう。でもこれを、脱「スーパーマーケットの出先機関」と明確に考え、計画的に調理・保存していく知的なゲームだと考えると、ちょっとエキサイティング。
ともあれ、無自覚的に買ったものを冷蔵庫に押し込めることへの反省をする、「冷蔵庫の日」でした。