まちの中の建築スケッチ
第72回
東京ビッグサイト
——新都市の建築——
東京湾の埋め立て地、お台場に隣接する有明地区に、東京ビッグサイトがある。逆四角錐が4つというダイナミックな形状は、新都市に多くある目立つ形状の建物の中でもひときわ目を引く。
思い起こすと1995年は、都知事選で青島幸男が当選した年である。予定されていた世界都市博の中止を公約に掲げてのことだった。経済界としては大いに予定が狂ったということはあったと思うが、その後も臨海副都心としての開発は進み、モノレールのゆりかもめが開通したのも1995年であり、東京国際展示場(東京ビッグサイト)を初め多くの大規模建築が顔を出した時期である。
ゆりかもめに乗ると、汐留(新橋)から25分で東京ビッグサイト駅に着く。車道に出ることなくデッキのレベルで東京ビッグサイトや、反対側の複合ビル群につながっている。スケッチも、駅を出たところで試みた。四角錐を逆さにした形の印象だけが強かったが、スケッチをしてみると、まわりのデッキや建物が入り組み、さらには、スケルトンの骨組みやトラス屋根が目立ったりして、少し距離をとってみると、ずいぶんとごちゃごちゃしているということがわかった。それだけに、逆四角錐の形が強く印象付けられる。正面の広場まで行って見上げると圧巻である。
展示場、会議場という施設としては、都心には有楽町に東京フォーラムがあり、お隣千葉県には、幕張メッセ、さらには横浜のみなとみらい地区などと比べても、周辺の広場の構成、施設規模としての利用しやすさ、交通の便など、都市施設として成功例のように思う。設計者である佐藤総合計画を特集として扱った建築画報390(2022年4月)の中で、細田雅春(1941―)は、「強引ともいうべきエネルギーに満ちあふれ、若かったからこそできた作品」と評しているが、時代のエネルギーを体現していることは感じられる。
周辺にも、大胆な形を競う建物は多く、だいたいは、鉄とガラスの構成ではあるが、都市景観としては、水辺の空間とも一体化していて、まさに新興国の都市もかくあらんという雰囲気が心地よくもある。すでに人口減少社会となって、これ以上埋め立て地が広がるということはないであろうから、東京の最も新しい副都心としてのまちは、水辺の気持ちよさにもう少し緑が加わりえるのだろうか。果たして20年後、30年後には、カーテンウォールの建物にも貫禄が付いて、淘汰される建物もあることだろうが、またどんなまちになるのかと想像する。