流しの洋裁人の旅日記
第1回
「服をつくるひと=洋裁人」
になりたい
はじめまして 流しの洋裁人です。
まずは読み方ですが「ながしのようさいにん」と読みます。
全国各地に裁縫箱やミシンを持参して、その場にいる人やお客さんを巻き込んで服を作る光景ごと提案・販売しています。
この「洋裁人」という言葉は、きっと辞書をひいても出てきません。職業としても『15歳のハローワーク』には載っていませんでした。これは「洋裁をして生きていく人」という、自分が今後の人生をどう生きていくかを決意した、4年前につくった造語です。
私は小学生のころから将来の夢に「服をつくるひと」と書いておりました。でも進路選択の際、「ファッションデザイナー」なのか「パタンナー」なのか迷い選択を先延ばしに生きておりました。どちらもしっくりこなかったからです。一般のファッションシステムでは、企画・デザイン・製図・生地をつくる・手配する・縫い合わせる・送るなどがすべて分業化されています。しかし私はできるだけ生地から服を作って渡すまで自分でやってみたいという気持ちがあったのです。
「世の中にある職業や言葉にはまらないから、きっとしっくりこなくて決めかねていたのだ。ないなら自分でつくるしかない」こう決意して「洋裁人」という言葉が生まれました。
そしてなぜ「流しの」とつけたのかは、「特定の場所に留まらない」からです。お店も構えておりません。自分が移動して服を作りながら生きているのです。
服をつくることを仕事にしていくとして、どうやってお客さんと出会い、どのようなスケジュールで服を作るのかを考えました。現状では仕立て業界の洋裁店だとお店を持ってそこにお客さんが服を作りにきますし、アパレル業界のお店であれば春夏・秋冬などに展示会を開き受注を受けて服を作って販売したり卸したりします。このどちらの方式にも自分の理想が当てはまりませんでした。作っている私とお客さんとの間に、時間差と距離差があると感じたからです。
では、何を理想とするのか。これにはモデルとなったものがあります。それはガーナで見た光景です。