森里海から「あののぉ」
第5回
大谷石と徳次郎石の石蔵集落
その大谷資料館のほど近く、西根地区の徳次郎町というところに、大谷石を使った石蔵が点在する集落があります。車であたりを走るだけですぐに個性的な石蔵をいくつも見つけられます。
大谷石で装飾された窓枠や窓台、庇、持ち送り、オーダーなど手の込んだものも多く現存しています。同じデザインのものはほとんどなく、競って個性を主張しているかのようです。
なかに大谷石とはちょっと違った表情の石蔵もいくつか見受けられました。ライトグレーのシックな色合いのこの石は徳次郎石と呼ばれるものらしく、地元徳次郎町でしか採れない貴重な石のようですが、現在はほとんど流通していないようです。
徳次郎石の外壁はジョイント部に漆喰を塗りつけ、海鼠壁のような独特のパターンをつくっているものもあります。また屋根材としても使われており、大谷石の石蔵以上にこだわった造りとなっているように見受けられました。
長年の風雪に耐えた大谷石や徳次郎石の風合いは、集落の風景をつくっています。地元の材料を使った、ここにしかない建築とそれらがつくりだすここでしか出会えない街の風景。そんな風景が日本中にもっと増えると良いのに、と強く思う今日この頃です。
※ 本連載は、菅組が発行する季刊誌『あののぉ』で著者が連載している内容を転載しています。