「ていねいな暮らし」カタログ
第23回
「食」のプロセスを知る——『PERMANENT』
前回は「食べること」をテーマに据えたリトルプレス『PERMANENT』の語り口に着目しました。東日本大震災以降「食べること」に強い関心を持ち、「普通の人の食卓の風景1」や街角にあるカフェなど、日常に根ざした「食」を紹介している冊子です。食をテーマにしたリトルプレスは多くありますが、『PERMANENT』が興味深いのは前回紹介した「文体」とともに、「食」のプロセスを共有しようとする姿勢にあると思います。
私自身は、『PERMANENT』刊行当初から本屋で見つけては購入し読んできましたが、中でもNo.6で取り上げられた鶏をさばくプロセスが特集された号には驚きました。今でこそ、ジビエの盛り上がりもあり、野生動物の解体に関する雑誌の特集や体験本・ウェブサイトなど多く見られるようになりましたが、リトルプレスの中でこういったものが特集されることは私の知る限りなかったと思います。専門家の手ほどきを受けながら、鶏を絞めるさま、血の滴るさまなどが写真とともに紹介されます。最後は、スープをとって骨の髄までいただくことを伝えています。
私たちは毎日のように肉を料理し食べているわけですから、動物の姿が解体され、食膳として並ぶことは当然のことであるのですが、このページを見て「驚いた」ということは、普段どれだけ「食」のプロセスへの想像を抜きにして過ごしているかがわかります。本号は私のメディアに関する大学の授業でも紹介していまして、毎年何人かの受講生が興味を持って借りにきていることからもこのことは明らかだと思います。
このように、「食」のプロセスを伝えてきた『PERMANENT』ですが、誌面上だけでなく、ワークショップという形で「食」のプロセスを共有する機会を作っているようです2。残念ながら私は参加したことがないのですが、紙冊子を作ることから始まり、ともに考える場を作るところまで、あらゆるメディアを横断し、ゆるやかに続けられていくこともまたリトルプレスの中ではあまり見られないことであるので、今後どのような展開が見られるのかに注目しています。
(2)食のリトルプレス『PERMANENT』を発行するサダマツシンジさん・千歌さん|「colocal コロカル」ローカルを学ぶ・暮らす・旅する 2019年1月9日参照.
https://colocal.jp/topics/lifestyle/people/20151120_57459.html