「ていねいな暮らし」カタログ
第22回
文体の妙——『PERMANENT』
先日、実家で農家をされている同僚の方から野菜を分けていただきました。ほうれん草や金時人参など季節のものをいただくことができ、言うまでもなくとても美味しいので(なんたって産地直送ですから!)、毎回とても楽しみにしています。地産地消や自給自足は、今日の暮らしのキーワードであると言っても過言ではないと思います。今回紹介する『PERMANENT』は、2011年の東日本大震災時に暮らしに危機感をもち、中でも「食べること」について特化したリトルプレスです。
『PERMANENT』は、2013年に季刊誌として創刊され、これまで7冊発行されています。A5判の32ページの冊子で、表紙は写真中心に構成され、初期『Ku:nel』を彷彿とさせるレイアウトになっています。内容を伝える文言は表紙には載せられておらず、” Independence and quality of life. ”と「つくる、たべる、かんがえる」のフレーズが毎号付されています。表紙・内容含め、動きのある写真が使われることが多いことからも、「映像」を共有するという感覚の強い冊子と言えるかもしれません1。
内容は、毎号4つほどのエピソードと写真とで構成され、文体に特徴があります。例えば、No.2の冒頭記事は「それにしても、」から始まります。何の前置きもなく、「それにしても、」と言われるのは読み手としては不思議な感覚で、フッとその記事の中に放り込まれると言いますか、「筆者と共有していたかもしれない何か」があったかのような気持ちにさせられます。他にも、取材対象の方を「――さん」と呼び、「この人を紹介します!」ではなく、読み手からすると唐突に「――さんは、―――考え続けている」と話が始まり、読んでいくとその方の生業がわかっていくという構成を取っています。このような文体もまた映像を見ている感覚に近いなと思うのです。写真と文章のレイアウトも記事ごとに統一させる形をとっており、そのことでまた誌面がリズミカルに映ります。
本誌は、単なる読み物としてだけでなく、食にまつわる実践的なことにも目を向けているようです。次回はそのことについてご紹介したいと思います。
http://permanentbros.com/archives/1747