びおの珠玉記事

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「3分10円」だったころ、電話はみんなのものだった。

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから珠玉記事を再掲載しました。
(2012年01月30日の過去記事より再掲載)

黒電話とメモ帳と鉛筆

携帯電話各社の通信障害が立て続けに報道されています。
NTTドコモで1月25日(2012年)に東京で大規模な通信障害が起こった事故では、パケット通信を用いて無料通話が出来るアプリケーションによって通信料が増大したことが原因か、という報道もありました。

1970年1月30日は、公衆電話の市内通話電話料金が「3分10円」に定められた日です。それまでは、1通話10円で、長電話が可能だったのですが、それでは商売あがったり、ということか、3分という上限が定められました。

3分10円というのは、その後、長期にわたって継続されましたが、電話の自由化、携帯電話の普及、IP電話の出現などによって、電話の方法・料金とも多様になっています。

緑の公衆電話昔は3分10円だった公衆電話。今は1分10円です。

現在では、公衆電話の市内通話料金は税込10円で60秒。
NTTの固定電話間の電話料金は、税込8.925円で3分の通話が可能です。
IP電話同士や、インターネット網を使った通話では、より安い、場合によっては無料での通話が可能です。

こうしたインターネットを用いた通話以外にも、家族間無料、同キャリア間無料など、電話の「無料化」が進み、skypeつなぎっぱなしが当たり前、3分10円の時代を知らない世代も現れています。

減っていく公衆電話

テレホンカードの登場で、小銭切れの心配は少なくなりましたが、一定の年代以上であれば、公衆電話で10円玉の残りを気にしながら電話、という経験をお持ちの方も多いでしょう。

公衆電話はピーク時の1985年にはおよそ93万台が設置されていましたが、2011年には約25万台に減少しました。駅などの施設で、電話が撤去された後の台だけを見かけることも多くなりました。

グレーの公衆電話

ISDN公衆電話。モジュラージャックを装備しており、通信が出来る電話として、これを探したことのある経験者も多いのでは…?


公衆電話には、第一種・第二種の区別があります。
第一種公衆電話は、災害時の通信手段維持のために、電気通信事業者に設置が義務付けられているものです。
一方、第二種公衆電話は、こうした義務付けはなく、営利のために設置しているものです。

携帯電話の普及などによって、第二種公衆電話は利用が減り、コストが見合わないため撤去されてしまうケースが多いようです。
携帯電話を持って便利になった人が増えた反面、その結果として公衆電話が減少し、携帯電話を持たない人、特にお年寄りや子どもなどには不便を強いる状態になっているのは、なんとも皮肉です。

黒電話

かつて、電話は玄関や廊下に置かれるのが一般的でした。

1985年の電電公社民営化以前は、ダイヤル式の「黒電話」を公社からレンタルする、というスタイルが一般的でした。というよりも、選択肢がなかったのです。「黒電話」は、昭和のシンボルといえるかもしれません。

懐かしの黒電話

「サザエさん」の磯野家では廊下に、「ドラえもん」の野比家では玄関に電話があります。
集合住宅では、電話が共通で1台ということもあり、「めぞん一刻」でもそういった様子が描かれています。

昔は電話を持っていない家もあり、近所の人との間で、電話の貸し借りということもあったため、玄関や廊下といった場所に電話が設置されることが多かったようです。

もはや電話のない家も

電電公社が民営化されNTTや他の電話会社が生まれると、現在のように電話機は自由に選べるようになります。
留守番電話付き、ファクシミリ付き、無線式の子機など、さまざまな機能がついた電話が普及していきます。

しかし、1996年ごろから携帯電話の普及がはじまると、同じ頃から固定電話の契約本数は減っていきます。

一方で、従来の加入電話ではなく、インターネット網を用いたIP電話の利用者は増加傾向にあります。携帯電話の普及とインターネットの出現で、固定電話は、ネットのオマケのような存在になってしまったのでしょうか。

現実に、固定電話を持たない世帯も増えています。学校の連絡網でも、連絡先が携帯電話という世帯も見られます。
核家族化、共働き、子どもも含めて家族がそれぞれ携帯電話を持つようになると、固定電話は不要だという選択肢は、合理的な判断ともいえますし、むしろそれがあたり前になっていくのかもしれません。

電話と世論

内閣支持率が○○%に…などとよく報道されている「世論調査」。この多くは、電話を使ったRDD(Random Digit Dialing)方式で行われています。

ランダムに発生させた電話番号に電話をして調査を行う、というものです。
この対象となるのは固定電話だけで、携帯電話のみを利用している人は、調査対象になりえないのです。

携帯電話の普及率が上がり、固定電話の普及率が下がっていく中、世論調査もおそらく見なおされることでしょう。でも、外出先にまで電話がかかってきて、今の総理大臣てどうですか、などと聞かれるのは、少々いただけないかもしれません。

※2016年から携帯電話も世論調査の対象となりました。