「ていねいな暮らし」カタログ
第32回
耳を澄ますように読む
——『Subsequence』
今回紹介する『Subsequence』は、2019年の3月に創刊し、今月2号の発行がお知らせされています。私は、フォローしている本屋さんのInstagram投稿で『Subsequence』のことを知りました。ウォーホルが作っていた雑誌『Interview』を彷彿とさせる大判の作りにピンク色の表紙、そしてテーマに掲げられる「Arts & Crafts for the Age of Eclectic」(意味は「”折衷”時代のアーツ&クラフツ」と公式ウェブサイトで説明されています)、しかも、編集長は井出幸亮氏ときましたから、読まないわけにはいきません。
井出氏については、この連載の中でも第4回で引用しましたように、「ライフスタイルブーム」に関する文章も発表されていまして、『Ku:nel』のような暮らし系雑誌が社会にどのように必要とされ、どのような文化を引っ張ってきたと考えられるのかについて、工芸の観点から説明されています 1。21世紀あたりを境に、工芸が雑貨的にも扱われていくことについて、消費や記号といった言葉で説明されます。そんな編集長が作る本誌は、「創造的な人生」や「文化的な暮らし」を営んでいる世界各地の人たちに「話を聴きに行く」スタンスをとっており、その多くは地形的な意味での「僻地」や忘れられてしまいそうな文化的記憶をテーマにしています。読んでいると、その文化に辿り着くまでのさまざまな「時間」について考えがめぐります。
ニューメキシコの陶芸文化、青竹染め、1990年代の上海写真、アイヌの木彫を継承した方の話…。それぞれの暮らしをかみ砕いていくと、その人個人のルーツであったり、その土地の風土であったりといった「空気」のようにまとわりつくものにいきつきます。大判サイズにしては細かい文字(最近のカルチャー誌の傾向でしょうか)で書き取られる文章は、目を凝らして読む=耳を澄ますことを強いられるかのようで、雑誌の構造的にも内容的にもそれぞれのページへの没入感が与えられる感じがあります。
本誌の特徴として、大判であることがまず出てくると思うのですが(260 × 372mm 164ページ!)、持ち運んでも重くならない軽くてザラザラした紙が使われており、カラーの写真もふんだんに使われているので、ページをめくったり戻ったりするのが楽しく感じられます。衣服を扱うブランドから出されているということもあってか、服飾用のミシンを使って1冊ずつ製本されているとのこと。次号も楽しみな一冊です。