移動制限緩和のパリ
ところかわれば
| 森弘子
日本は先日緊急事態宣言が解除されましたが、フランスでは少し前の5月11日に移動制限が緩和されはじめました。5月7日に移動制限緩和が閣議決定、「ウイルスとの共生」を念頭においた内容が市民に説明され、5月11日より解除の第一フェーズが始まりました。そして先日28日には、6月2日に開始される第二フェーズの内容が発表されました。(衛生緊急事態宣言は7月10日まで延長、6月22日に第三フェーズ開始)
5月30日現在、フランスにおいては新型コロナウイルスによる感染者数は149,668名、死者数は28,714名となっています。(人口は約6699万人(2019年1月時点)) 新規感染者数は 255人で、ピークの7,578人(3月31日)と比べると落ち着いて来ていることがわかります。
移動制限が緩和されて早3週間が経とうとしていますが、「みんな本当に外出していなかったんだ」と素直に思うほど人も交通量も急増し、街の風景は変化しました。
フランスは、解除第一フェーズでは赤ゾーンと緑ゾーンの2つに分けられ、各ゾーンで制限緩和の方法が異なっています。パリはリスクが未だに高いイル・ド・フランス圏にあり、赤ゾーンとなっています。6月2日以降の第二フェーズではオレンジゾーン(イル・ド・フランス圏と一部の海外県)と緑ゾーンに分けられることになりました。
解除にあたり、店舗内への立ち入りと公共交通機関の利用時にはマスク着用が義務付けられています。また、入店の際にはアルコールで手の消毒を行い、人との間隔も1mを取ることとされています。第一フェーズではカフェとレストランは営業ができない状況(テイクアウトのみ可能)でしたが、緑ゾーンでは6月2日以降営業再開可能で、オレンジゾーンではテラス席のみの営業が可能となります。さらに、1テーブルあたり10人まで、テーブル間隔は1m以上、従業員及び客の移動時のマスク着用は義務、バーについては立ち飲みは禁止となっています。
第一フェーズでは閉鎖されていた公園も、6月2日を待たず、5月30日の週末から全土で再開されました。6月2日以降、ビーチ、博物館、歴史的建造物等の営業も全土で再開されます。緑ゾーンでは同日から、オレンジゾーンでは6月22日から、プール、ジム、レジャーパーク、劇場の営業も再開され、徐々に日常が戻ってきています。
フランスでも国民にマスクを配布する施策があり、5月11日以降、事前にウェブで申し込みをすると最寄りの薬局で受け取ることができるようになりました。受け取りには、人が集中しないように日時が制限されており、我が家もようやく5月30日に受け取りに行くことができました。フランス政府は当初、コロナウイルス感染予防にマスクは有効ではないとし、着用を推奨していませんでした。しかし、移動制限が始まる頃になると、有効であると説明、移動制限中はほとんどの人がマスクを着用していました。
しかし、もともとインフルエンザなどが流行る冬場もマスクをする習慣がなく、夏場になることも合間って、実際目に見えて道端ではマスクを着用する人が減ってきているように感じます。2ヶ月ほどではマスクの着用は習慣として定着するのは難しそうです。
習慣といえば、欧米では挨拶にキスやハグを行う習慣がありますが、フランスでは感染を広げる原因となる挨拶の方法を変えよう、という広告が移動制限緩和後の街に見られるようになりました。とはいえこちらも、すでにあちらこちらでビズ(キス)で挨拶をする若者を見かけるようになり、「しない」という習慣も定着が難しそうです。
フランスでは、現在は新規感染者数の伸びも鈍化し、政府の見解も「感染拡大速度は抑制できており、当初の目標よりも良い状況」となっています。しかし、カフェやレストランがオープンしない反動でセーヌ河岸などパブリックスペースに人が集中していることや職場への復帰が進む中、すでにreconfinement(ル コンフィヌモン、再移動制限) という造語ができているように、巷では夏以降第二波が来るのでは、と考えている人も多いようです。
レストランやカフェに人がにぎわう華やかなパリが戻ってくるまではもうしばらくかかりそうです。