フランスのクリスマス
ところかわれば
| 森弘子
フランスでは10月最終日曜日にサマータイムが終了し、時間が1時間が早められるため、日が暮れる時間も1時間早まります。そのあとは日をおうごとに暗くなるのが早くなり、そしてそれに抗うかのように11月に入ると街中でクリスマスイルミネーションの準備が始まります。それは今年の新型コロナウイルスによる外出制限下においても同じです。
フランス語でクリスマスはNoël(ノエル)、語源はラテン語のnatalis=誕生です。キリスト教が文化に強い影響力を持つフランスでは盛大に祝われ、他の多くのヨーロッパの国と同様、家族で過ごすのが一般的。街もこの日にはお店が閉まり静かになり、さながら日本のお正月のようです。
デパートや店舗はもちろん、街路にも道路の上空にイルミネーションが飾り付けられます。この道路上空のイルミネーションは道路沿いの商店会によるもので、通りごと=商店会ごとにイルミネーションのデザインが異なります。デパートのショーウィンドウには、毎年異なる工夫を凝らしたイルミネーションが飾り付けられ、子どもたちを楽しませます。多くが音楽に合わせて人形が動くようなエンターテイメント性のあるもので、子どもたちが見やすいようにショーウィンドウの手前に階段が設けられます。今年は新型コロナウイルス対策で、一度に段に上がれるのは6人までと注意書きがありますが、ワクワクするショーウィンドウを前に子どもたちを制限するのは難しそうです。
クリスマスといえばクリスマスツリー。クリスマスツリー=もみの木は、フランス語ではSapin(サパン)と言います。工業製品のものもありますが、基本的には生の木を使い、デコレーションを施します。11月半ばごろになると街の花屋さんやスーパーでサパンの販売が始まります。販売時はネットで枝が広がらないように閉じて売られていて、広げると一番左の背の高いものは右のような大きさになり、小さいもので25€(約3100円)程度。ガラスのオーナメントなどで飾り付けます。11月下旬から12月上旬ごろは子どもを連れたお父さんが大きなサパンを担いでいる姿を道端でよく見かけます。クリスマスを過ぎ、1月頭の公現祭(主にイエス・キリストの受洗を祝う記念日)がすぎるとクリスマスの飾りつけをしまいますが、サパンは指定された場所に捨てることになっています。
食べ物もクリスマスには欠かせません。フランスのクリスマスディナーは特別に“Le réveillon(ル・レヴェイヨン)”と呼ばれます。フランスではフォアグラ(肥育したガチョウやアヒルの肝臓)、生牡蠣、シャポン(クリスマスのために特別に飼育される高級な鶏)、ビュッシュ・ド・ノエル(“クリスマスの薪”の意味)などが基本的なクリスマスメニューで、地方によって内容が異なります。ビュッシュ・ド・ノエルは、元々は異教の冬至のお祝いが起源だそうですが、中世頃には既に記述が見られる伝統的なクリスマスの食べ物です。
今年は例年と異なるクリスマス。通常時でもフランスではクリスマスは一年で最も消費が上がる時期と言われるほどですが、今年は外出制限で制約が多かったぶんクリスマスを楽しもうと、例年と比べ54€高い平均603€(約76000円)をプレゼントや食事に当てるというデータもあります。
イルミネーション以外でクリスマスの街中を彩る風物詩、シャンゼリゼ通りのクリスマスマーケットも今年は新型コロナウイルスの影響で開催されず、少し寂しい雰囲気ですが、イルミネーションをオンライン点灯式にし、個人で参加ができるという試みもありました。点灯式は終了していますが、公式ウェブサイトでは点灯時の様子を動画再生することができます。例年とちょっとちがうパリのクリスマスの雰囲気をのぞいてみませんか?
Illuminations Champs Elysees
https://illuminations-champs-elysees.com/en
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