2度目の外出制限、それでも主張するフランス

ところかわれば

森弘子

10月30日から、フランスは新型コロナウイルスの感染拡大第二波により、2度目の外出制限となりました。前回の外出制限は当初3月17日から2週間と言われていましたが、結果2度の延長を経て、5月10日までの55日間の措置でした。今回は初めから1ヶ月を超える33日間の外出制限と宣言され、11月24日のマクロン大統領のテレビ演説で12月15日までの延長が発表されました。

フランスは11月7日に一日約86000人の新規感染者数を記録したのをピークに、約3週間経った現在では1万人以下に落ち着きを見せ始めています。それでもフランスは世界でアメリカ、インド、ブラジル、ロシアにつづき5カ国目に感染者数の多い国となっています。フランスは7月よりPCR検査を誰でも受けられるよう無料としており、一時期は検査希望者が殺到し数日待たなければ受けられませんでしたが、現在では週に200万人が検査を受けており、検査数自体が増加しているのも感染者数が多い原因の一つとなっています。

PCR検査のテント

薬局の前に建てられた仮設のPCR検査スペース 検査数の増加を受け、ラボ(フランスでは血液検査などは個人の診療所では行わず、街中に複数ある専門のラボで行う)だけではなく、街にあるいくつかの薬局でも受けられるようになった 風で吹き飛びそうな心もとない仕様で、これで安全に検査できるのか不明だが、このテントの設置により誰でも気軽に受けられるため検査の件数は増えている

前回の外出制限が明け、夏のバカンスを経た8月の半ば過ぎから感染者数が再度増え始め、9月半ばには一日の感染者数が1万人を超え始めました。夏前から秋には第二波がくると噂されていましたが、再度の外出制限は経済が回らなくなるため行われないだろうと多くの人が考えていました。しかし、10月に入り感染者数の増加が万単位で増え始め、ついに30日に再外出制限が導入されました。

とはいえ、今回の外出制限は前回とは条件はだいぶ異なります。まず大きな点としては、学校が閉鎖にならないこと。これは子どもをもつ家庭が多いフランスにとっては、経済を回すためにも非常に重要です。今回は外出を制限しながらも、仕事はつづけるようにとテレワークを基本とすることとされていますが、仕事に関する打ち合わせなどの外出は比較的ゆるく制限されています。それもあり、前回よりは街中を歩く人が常に一定数おり、一瞬外出制限でないような錯覚を受けることも度々ありました。

車通りが少ないセーヌ川周辺

11月はじめのセーヌ川 17時半ごろだが日が短くなってきていて既に暗い 右手の休業しているオルセー美術館は照明が消え暗く、前面道路も普段は交通量が多いが、外出制限のため車通りが少ない

一方で、前回同様、レストランやカフェ、美術館や映画館など不特定多数が多く集まる施設や生活必需品店ではない小規模店舗等は閉鎖されています。運動のための外出も一日一回自宅から1km圏内までとされています。特に小規模店舗は苦しい経営を迫られており、夏以降街中で空き店舗が目立つようになりました。さらには、今回はクリスマス商戦という一年のうち最も売上が上がる重要な期間が外出制限に重なってしまい、追い討ちのようにフランスでも3年ほど前から導入されるようになったブラックフライデーが外出制限期間中にあたったため、インターネット販売を導入できていない小規模店舗には脅威となりました。そこで、感染者数も落ち着きが見え始めたため、11月28日から外出制限緩和第一段階とされ、運動のための外出が一日20km圏内3時間までに延長されることなど他の項目と合わせ、小規模店舗等も衛生上の規定を守りながら夜21時までの開店が許可されました。

今後は、1日の感染者数が5000人に抑えることができれば、12月15日に緩和第二段階(日中の外出解除で、夜間外出禁止を導入)、1月20日に完全解除という予定になっています。ちなみにクリスマスイブの12月24日と大晦日の12月31日は夜間外出禁止措置の例外とされています。

百貨店の様子

11月28日から店舗が再開され、百貨店も開店できることに 初日はこれまでの反動からものすごい人出で感染拡大がまた広がるのではと感じた 写真は翌日29日日曜日の百貨店で少し人出は落ち着いている

今回の外出制限で前回と違うところは、外出制限中でもデモが頻繁に行われていたことです。外出制限が一部緩和された28日には、パリをはじめとした国内各地で、警官らの姿を撮影した画像の拡散を禁止する条項などを含む治安関連法案に対する抗議デモが実施され、パリではバスティーユ広場等に46000人が集まりました。外出制限中は公共の場での6人以上の集会は禁止されていますが、事前に申請し許可を得たデモは行うことができ、今回も事前許可を受けていたとのことです。ただし、他人との距離を1m以上確保することなどの衛生措置が必要ですが、映像を見る限り守られているようには見られませんでした。通常時もデモは頻繁に行われていましたが、このような状況でも主張を止めないフランスの“権利”に関するこだわりを感じる一面でした。