ブックレビュー

家の歴史を考えた

『プロセスでわかる住宅の設計・施工』(鈴木敏彦+半田雅俊、彰国社、2016)を建築初心者の立場で読んだ。あの「F・LL・ライトに学ぶヴィンテージな家づくり」を連載している半田雅俊さんの著書である。といっても読んだのは基礎編の「良質な住まいをつくるための知識と視点」だけ。

興味深かったのは「日本の住まいの歴史から考える」。日本の住まいの歴史を縄文時代から現代にいたるまでたどっている。町屋や農家は構造形式が決まっていて「人が建物に合わせて使う」こと、明治時代の家の板ガラスはすべて輸入品であったこと、大正時代は性別就寝が普通だったこと、太平洋戦争による空襲で大都市が焼けるまでは都市部では借家住まいが普通だったこと、などが私には新鮮だった。今の日本の都市部における家づくりの伝統は戦後に作られた比較的歴史の浅いもので、それまでは江戸時代から脈々と続いた借家暮らしが伝統だったようだ。今の若い人が借家に親近感を持って、新築一戸建てに違和感を持つのは先祖帰りかもしれない。

浜松市の蜆塚公園で縄文晩期の家と旧高山家という19世紀半ばの家を見ている。

縄文時代の竪穴式住居は空気を循環させ排煙できるように茅葺屋根の下に換気口があいているのと入り口があるのだけのシンプルな間取り。
旧高山家は『プロセスでわかる住宅の設計・施工』にも書いているような「田の字プラン」よりもっと単純な「円の字プラン」。こういう単純な間取りを見ると三大欲求のうち食欲・睡眠欲は大丈夫だろうけれど、性欲はどうやって発散したのか気になる。老夫婦にその息子夫婦でどうやって夜を営んだのだろうかとか、外で営んだのかとか、夜這は特に気にしない習慣なのかとか、家のプライバシーの問題ってほとんど性欲に行きつく気がする。日本人は9月に生まれた人が多いらしいけれど、誕生月の多さと住まいの関係について調べたら何か分かってくるかも。縄文人はどの季節に多く生まれたんだろう?

旧高山家で気になったのは縁側がなかったこと。

縁側のない旧高山家

伝統的な家づくりというと「縁側」が思い浮かぶけれど、それもまた現代に選び直された例外的な過去の記憶に過ぎないのかもしれない。(甲)