パリで地産地消
ところかわれば
| 森弘子
先日、”locavore(ロカヴォール)”という言葉に出会いました。フランス語検定試験の類似問題のテーマでたまたま出てきたのですが、日本語への訳は「地産地消」、日本語と同じく住んでいる地域で生産された野菜などを消費しようという運動です。フランス語の先生にそのことを話すと、「パリでもできるわよ」と教えてもらい、早速ネットで検索してみました。
フランスではLocavor.fr(https://locavor.fr/)という組織がlocavoreの主な運営主体で、全国的に展開しています。
Locavor.frは、
- 小規模なネットワークにより地元の生産者から製品を購入できる
- 新鮮な旬の野菜を味わえる
- 食品廃棄物を抑制できる
- 雇用が生まれ地域内の人口維持に貢献できる
- モノカルチャー(単一の農作物を生産する農業の形態)を減らし、多様性を維持する
という主に環境に配慮した理念に基づいて活動を展開しています。仲介者の数を大幅に減らすことで、生産者にとってより公平なネットワークをサポートし、従来の流通経路で発生していた廃棄物を削減することができます。
最初は参加するのは難しいのかな?という印象でしたが、ひとまずは登録してみることにしました。
まず、アカウントを作成します。次に家の近くのlocavor(拠点、受取所)を、郵便番号を使って検索し、そこのlocavorメンバーになります。我が家は少し遠かったのですが、公共交通機関で一本で行けるパリ南端にあるlocavorに登録しました。登録自体は無料です。登録はここまでものの5分。
次に、メンバーになったlocavor専用のページから、Vente(販売)のタブをクリックし、製品の一覧を表示します。写真と値段を確認し、AJOUTER(追加する)ボタンを押し、買い物かごに入れていきます。製品は野菜だけでなく、パンやチョコレート、乳製品、茶葉などもあります。仕組みとしては、各locavorを運営する人がいて、その人が選ぶ近郊の生産者による製品が各locavorのページに表示され購入できます。登録したlocavorでは21組の生産者が製品提供をしていました。会計はVOIR PANIER(買い物かごを見る)から、クレジットカード払いをします。
製品の受け取りはそれぞれのlocavorによって受け取り曜日・時間と場所が異なります。我が家で登録したlocavorは、受け取りは毎週木曜日の17時半から19時まで。注文は受取日2日前の火曜日深夜1時まで可能でした。今はコロナ禍であるためか、受け取り番号順に時間も15分ごとに指定されています。思った以上に登録も購入もスムースにでき、驚きました。
受け取りは木曜日時間内に、指定の場所に取りに行きます。Alésiaというパリ南部のエリアにある1930年代に廃線になった単線の小さな駅舎をコンバージョンしたレストランの一角で受け取りです。
今回購入したのは、かぼちゃ、キクイモ、玉ねぎ。リサイクル可能な紙袋に入れて手渡ししてくれます。かぼちゃはそのまま。ネットで購入した際に「持ち帰り用の袋を持参してください」と書かれてあり、極力包装を減らす取り組みもなされています。ちなみにかぼちゃとキクイモは自宅から約30kmにあるシャルルドゴール空港近くの農場から、玉ねぎは約45kmにあるディズニーランドパリ近くの農場からやってきました。
Locavor.frによる拠点は2014年5月にマコンという街に第一号が登場しました。その後増加し続け、現在ではフランス全土に広がっています。実はlocavorは、屋内外の受取所の確保ができ、一定数の生産者とlocavorメンバーが集まれば、どこでも誰でも開くことができます。
地元で生産された旬の果物は、季節外れに輸入された果物に比べて、エネルギー消費量が1/10から1/20になる、仲介業者が減ることで、生産者の報酬が向上する、利益率が低いため、質の高い地元の食材を手に入れることができる、生産者からほぼ直接届くため早く食べることができる=よい品質のものを食べられる、などlocavoreはメリットがいっぱい。有機のものも選べ、生産者の顔が見えることが安心、かつ環境負荷が少ない流通体制に、大都市パリに住みながらも簡単に参加できるため、これからどんどん利用してくことになりそうです。
Locavor.frのウェブサイト(コンセプトページ)
https://locavor.fr/definition-locavore-locavorisme-et-circuit-court