La REcyclerie

ところかわれば

森弘子

パリ北部、パリ市内をぐるっと囲む環状線道路脇のPorte de Clignancourt(ポルト・ドゥ・クリニャンクール)のすぐそばに、「La REcyclerie(ラ・ルシクルリ)」というユニークな施設があります。コロナ禍中にネットでたまたま見つけたのですが、6月にレストランや文化施設が再開したタイミングでその施設も再開したので、先日初めて訪れることができました。

REcyclerieという用語を見てなんとなく「リサイクル」を想像した方もいるのではないでしょうか。フランス語で「再利用する」、はまさしくrecyclerで、rieはパン屋さんboulangerieなど「〜屋さん」を意味するrie。その二つを組み合わせた造語です。施設は元駅舎と廃線跡を利用しています。19世紀半ばに建設された現在の環状道路と同じようにパリをぐるっと囲った鉄道跡です。実は前回の記事Locavoreの配布場所の元駅舎のレストランも、ちょうどLa REcyclerieの反対側、環状鉄道のパリ南端の駅舎の跡です。線路自体はそのまま残されていますが、現在は北部の一部の線路を貨物輸送用に、西部の一部は郊外へ向かう鉄道RER C線に一部の線路が転用された以外、ほとんどが廃線となっています。

La REcyclerieの外観 エントランスはなんの変哲も無いレストランのように見える 中に入るとレストランが手前にあり、奥に進むと線路沿いに降りていける階段が続き、敷地は線路に沿って150mくらい細長くつづく Porte de Clignancourtの駅広場に面しているため人通りが多いにぎやかな場所にある

La REcyclerieの目的は環境に配慮した価値観を世の中に広めること。楽しくポジティブな方法で3つのR、“LES 3 R = REduire(削減) – REutiliser(再利用)– Recycler(再資源化)”を実践しています。「一緒にやる」「自分でやる」というコンセプトの元、施設内には、レストラン、アーバンファーム(都市型農場)、アトリエなどがあり、イベントなど様々なプログラムが用意されています。レストランは旧駅舎内と廃線沿いの旧ホームなどをテラスとして使っているため席数は多く、食事は全てその場で調理され、地元の野菜を使った健康的で環境負荷の低いものが提供されます。

線路を見下ろせる特等席 La REcyclerieで育てられている鶏の卵や近くの農場で取れた季節の野菜を中心にしたボリュームたっぷりなメニュー ベジタリアンメニューやキッズプレートもある 線路へは降りていくことができ、写真奥の橋より50m程度先まで散策可能 両脇のホームは細長い農場になっている 右下線路脇に見える箱は養蜂箱

徹底しているのが、コンセプトに沿った「自分でやる」こと。レジで会計した後は、自分で食事を取りに行き、食べ終わったら自分で食器を下げ、残り物などを整理します。お皿、カトラリー、カップ、残り物、トレー、紙ナプキンなど使った物すべてをそれぞれのケースに戻していきます。パンは専用のケースに入れ、敷地内で飼われている鶏のごはんになります。

“Centre de tri”は、リサイクルセンターのこと、その下には「ここで残り物をリサイクルしています」と書いてある 食器を整理して自分で片付ける 写真右手に見えている縦長のケースが鶏用パン専用残り物入れ

他にもパーマカルチャーなど様々な環境に配慮した手法を取り入れた実験的な小さな農場(ferme urbaine、アーバンファーム)や、会員になると使えるアトリエもあります。アトリエでは月曜から土曜の12時から20時まで、200種類以上もの道具を借りることができ、自分のものを持ち込んで修理したり、プログラムに参加することができます。

他にも平日含めて、農場体験ができるイベントやLa REcyclerieで採れた蜂蜜の販売会、エシカルな化粧品をつくるアトリエ、環境に関するブックイベント、映画上映など多種多様なイベントがほぼ毎日計画されています。

先日訪れた時は真夏日でとても暑かったので、テラスの木陰がとても心地よく長居してしまいました。場所はクリニャンクールの蚤の市からすぐ近く。また旅行ができるようになったら、蚤の市をのぞくついでに、パリ近郊で採れた野菜中心の美味しいブランチはいかがでしょうか?

La REcyclerieのウェブサイト
https://www.larecyclerie.com/