まちの中の建築スケッチ

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中野サンプラザ
—— 集いの空間——

中野サンプラザ

東京構造設計事務所協会の新年賀詞交換会が、2月の初めに中野サンプラザ11階の宴会場で開催された。特別会員を拝命しており、懇談の場にはよく参加させてもらっている。まもなく解体されるということから、皆で見ておこうという幹事さんの心配りであったかと思う。外からは何度か眺めていたが、中に入るのは初めてであった。是非、スケッチに残しておかねばと思って、日曜日に出かけた次第である。JR中野駅前の広場に面した、サンプラザの2000人収容の大ホールは、正面に三角のガラスの大屋根で人々を迎える構成になっている。音楽を始めさまざまな催しに利用された歴史を思う。
設計者の林昌二(1928-2011)については、本シリーズでもかつてパレスサイドビルのところで、すでに解体された日本IBM本社ビルにも触れ、平面の両端にコアを配置した事務所ビルのことを書いた。中野サンプラザの場合も高層部分はホテルや研修室などになっているが、正面から見ると同様な構成になっている。しかし、大ホールを抱えていることから平面が下層ほど大きくなって、側面からは三角形になり、まさに複合用途ビルを高層にまとめたユニークな形である。築50年で、まだ使える大規模なビルが解体されるのは、実に残念である。ただ残念というだけでなく、まちが壊される寂しさを生む。さらに言えば、脱炭素化や、SDG’sとかが叫ばれているはずなのに、経済的にパワーを持っている人たちの判断の無神経さを悲しく思う。前川國男の東京海上ビルや芦原義信の第一勧銀本社ビルも、すでに解体工事の仮囲いの中にあるのは、わが国の建築文化の貧困さ以外のなにものでもない。
中野駅北口は、バスの停留所群を越えたところが中野サンプラザのビルの正面広場となっている。日曜日ということもあって人出も多く、広場には、サンプラザ内のイベントに並ぶ人たちが行列をなしていた。中野サンプラザの西(左)側は並木道を隔てて区役所、東(右)側はサンモール商店街など昔からの低層の商店が並ぶ。当時としては巨大なビルも、今では馴染みやすいスケール感になっている。
駅前北口の再開発事業は、中野サンプラザと中野区役所を含む地区に、圧倒的に大規模な、高さも3倍に達する250mを超える超高層ビルとして計画されているようであるが、果たして方向性として、これからの時代に相応しい都市計画と言えるのか気になる。「中野サンプラザのDNAを生かして」という言葉が再開発事業計画の中に登場しているが、それだけまちに馴染んだ存在であるということも認められるということだったら、30年、50年延命することを本気で検討できなかったのだろうか。自治体のお金は、大規模再開発にではなく、多くの人に親しまれているビルの保全・改修や、低層の商店街を快適で安全な構成に整備していくことに使うというようにならないと、住民の声を反映したまちづくりにならないと思うのだが。