おひさまと二十四節気

Vol.17  寒露・栗ごはん

栗ごはん

料理をするようになって知った栗をむく手間!
でもやっぱり季節に一度は栗ごはんを作りたい、、
お店に栗が並びはじめると、そわそわします。
(画・祖父江ヒロコ)

二十四節気は「寒露」を迎えました。この節気の七十二候は、初候「鴻雁来(こうがんきたる)」・次候「菊花開(きくのはなひらく)」・末候「蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)」、“冬鳥(雁など)が渡り来て、菊咲き始め、虫(蟋蟀:昔はコオロギをキリギリスと呼び、「蟋蟀」はコオロギや鳴く虫の総称でした)鳴き始める”頃です。「鴻雁来(こうがんきたる)」と聞いて、以前にも目にしたような…しないような…と思われた方もいるかもしれませんね。
おそらく「清明」の次候、今年でいうと4月10~14日の「鴻雁北(こうがんかえる)」ではないでしょうか。「がん」とも「かり」ともいう雁は、10月初め頃北方からやってきて、翌春3月まで留まり、北へ帰ります。七十二候には、この他にも「雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)」と「雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)」、「虹蔵不見(にじかくれてみえず)」と「虹始見(にじはじめてあらわる)」、「乃東枯(なつかれくさかるる)」と「乃東生(なつかれくさしょうず)」など、<対>となる言葉が散りばめられており、巡り来る時の移ろいを感じさせてくれます。

さて、秋の味覚のひとつといえば「栗」。栗好きとしては、『真砂女歳時記(鈴木真砂女著・PHP研究所発行)の中で紹介されている「栗食べて 膝をはらへば 暮れてをり」(坂間春子)の一句に、“うんうん、そうそう”と頷きながら、『おばあさんの知恵袋(桑井いね著・文化出版局発行)という書籍が、懐かしく思い起こされました。

発行されたのは1976年。進む核家族化でお年寄りと暮らす家や人が少なくなり、わからないことを聞こうにも聞く人がいない、という時代の中、つつましく主婦として生きてきたひとりのおばあさんの、むかしの生活・家事の工夫を振り返る思い出話が、新聞に連載されました。それが大きな反響を呼び、その後一冊の本としてまとめられたのでした。

そのいねおばあさんによると ──「栗は、降雨量の多い土地によく育ち、しかも降雨量の少ない年のものがよいお味ですとか。また一つのいがに三個入っている場合、真ん中の押しに押されてやっと大きくなった両側の平たいものがお味がよいとか申しました。水っぽい栗は、ごはんにいたしますと、煮えるときにお米に水分が吸収されてほっくりとなりますので、まずい栗を他家からいただいたときにごはんにいたしました。」──へぇ~、なるほど。

焼き栗をむく小さな刃物は、「木屋」という刃物屋で買われたそう。創業寛永四年(1792年)の東京・日本橋「木屋(きや)」は、打刃物・生活の道具専門店として230年余、今もそののれんを守り続けています。

日本における栗の歴史や種類、栄養や効能などは、〈びおの珠玉記事(第62回)〉で詳しくご紹介しています。実際に栗拾いをしてみた収穫体験の様子もお伝えしていますので、ぜひご覧ください。ちなみに、事務局のある静岡県内での栗の産地・掛川市には、書物に記載はありながらも品種登録がないため、“幻の栗”とされている「八高(はっこう)」という品種があります。その大きさは、普通の栗の1.5倍、あっさりとした味わいが特徴です。
今年は地域によって、豊作・不作の報を耳にしますが、とにかくやっぱり、秋に一度は味わいたい、ほっくりおいしい「栗ご飯」!