おひさまと二十四節気

Vol.18  霜降・落ち葉

落ち葉いろいろ

落ち葉をいろいろ描きました。
紅葉狩り、そろそろでしょうか。
(画・祖父江ヒロコ)


霜降(そうこう)」は、秋の最後となる節気です。「(しも)」は、地面や物などの表面が放射冷却によって冷え、その上に空気中の水蒸気が直接昇華して氷(結晶)ができる状態をいいます。太陽が顔をのぞかせるとすぐに消えてしまいますが、目に入る一瞬の寒さに、秋の深まりを覚えます。

建築家・吉村順三氏の名作として知られる「軽井沢の山荘」を、氏みずからが山荘を案内する仕立てで編集された書籍『小さな森の家(建築資料研究社発行)に、<軽井沢の四季>という章が設けられています。季節でさまざまに変化する森の姿が、植物のごとく土地に根付く山荘の姿と織り合いながら、凛と、瑞々しく紙面におさめられています。

紅葉した樹々が映り込む池、落ち葉に敷き詰められたアプローチ、美しく色づく森の佇まい、居間から眺める透明な空気感の中に広がる秋の裾模様……縦横20cmほどの小さな本ですが、建築写真家・さとうつねお氏の手によって読者の心に曇りなき拡大鏡が手渡されたようなごとく、その風景が奥行深く伝わります。

気温が7℃以下になると色づき始める紅葉は、一日の寒暖差が大きい程に美しい色を発し、また、最も美しいのは、落葉前のわずかな間といいます。日本人は毎年、この豊穣な華やぎを求めて「紅葉狩り」に出かけます。が、ある一冊の本が、落ち葉がゆっくりと色褪せる、そこにも美しさがある、ということに気づかせてくれました。

書籍『翻訳できない世界のことば(エラ・フランシス・サンダース著・前田まゆみ訳/創元社発行)は、他の国のことばではそのニュアンスをうまく表現できない、ひとことでは訳せない52の単語を集めた本です。その中にあった、フランス語の形容詞「FEUILLEMORT(フイユモール)」 ──枯葉のように色が薄れてゆく── に添えられた文章を、ここにご紹介します。

秋の枯葉は、世界がどんなに価値あるものかを教えてくれます。四季のあるところに住んでいるなら、木立の下の美しい落ち葉がゆっくり色あせていくとき、枯葉色のメガネを通して日々が見えてきます

この本では日本のことばもいくつか紹介されていますが、その中に「BOKETTO(ボケット)」がありました。

日本人が、なにも考えないでいることに名前をつけるほど、それを大切にしているのはすてきだと思います

という一文がとても面白く、一体誰が言い始めたのだろう…?と思った途端、無数に在るひとつひとつの言葉の誕生と歴史にそれぞれのドラマがあることをしみじみと実感。この日の終わりはなかなか瞼が落ちない、秋の夜長となりました。