びおの織り子たち
びお編集部の「ゆる〜く住まい談義 」(1)
住まいマガジン びおの企画会議の中で、編集部の3人(編集の林・デザイナーの阿部・編集長の尾内)の共通点はなんだろうと考えたところ、「まだ持ち家がない」3人であるということがわかりました。それぞれに結婚し家庭を持ちながら、マンション住まい。そんな持ち家がないメンバーだからこそ伝えられることは何か。私たちの等身大の視点を大事にした企画作りがしたい。そこで、まずはどんな住まい感・住宅感を持っているのか話をしてみようというゆるい会です。
今回は、現状の様子とそもそも家に対する憧れについて話しました。
|いま、どんな家に住んでいる?
尾内 ではまず、それぞれがどんな家に現在住んでいるのか話していきましょうか。阿部さんはどんなお宅にお住まいですか?
阿部 うちは結婚する前から旦那がすでにマンションを買っていたので、結婚後そこに私が入りました。もともとそのマンションは2LDKの作りだったのですが、自分たちでプチリニューアルして1部屋をリビングとつなげて1LDKの形にして住んでいます。うちのマンションは築40年以上をとうに過ぎた建て替え時期に入っている古いマンションです。マンション全体でも水漏れがあったり排水が臭ったりとか結構いろいろ問題が多くて、あと何年住めるか? という問題に直面しています。住み替えか、今のマンションをリフォームして住み続けるか、悩んでいます。
尾内 旦那さんはなぜその家を購入されたんですか?
阿部 うちのマンションは浜松市でも大きな街道沿いで、将来的にはその道路が拡張されると聞いて、拡張するときにお金がバンと入ってくることを期待して購入したんです。
林 なるほど!
阿部 十数年前にすでに買っていましたが、それでも三十年くらい経っているマンションだったため安く、その安いうちに買っておいたんですけれど、今のところ道路を拡張するという話は実現しそうにありません。
尾内 そんな買い方があるんですね。
林 投資目的ですね。
阿部 でもうまくいかなかったパターンかもしれません。
尾内 そんな情報をどうしたら入手できるんでしょうか。
阿部 うちの旦那はビルや橋をつくっている建築関係の仕事なので、そういった情報が耳に入りやすいのかもしれません。
尾内 ありがとうございます。一方の私ですが、私と林さんは夫婦関係なので、同じ住宅に住んでいます。林さんからどんな家に住んでいるかを説明してもらっていいですか。
林 僕たちは、マンションの4階に住んでいて2LDKです。リビング以外のふた部屋のうち一つは物置と化しています。場所は、尾内が川や水辺が好きなので川が近くにあるという基準で選びました。
阿部 部屋からは川が見えるんですか?
林 見えないです。
尾内 見えないですが、川沿いを歩いて通勤できるよう想定したんです。今は寒くて風が強くてとてもじゃないけど歩いていくことはできないですね。毎日車通勤になってしまい寂しい限りです。
林 隣が神社兼お寺なので自然は多いですね。自然というのかな、緑は多い感じです。
阿部 そういえば、4階なのにエレベーターがないんですよね?
林 ノー・エレベーター住宅です。
尾内 そう、それが少し気がかかりになってきたところです。妊娠してお腹が大きくなったらどうなるかなとか、部屋で陣痛が来たら、一人でも二人でも階段を降りるのは大変だろうなと不安になって、少し地面に近いところで暮らした方がいいんじゃないかと引っ越しを意識し始めました。まだ住んで一年も経っていませんけど。
|家に憧れを持つということ
尾内 じつは先日、ある建築家の方のご実家が空き家になっていると聞いて見学しに行ったんです。海の近い街で、平屋の37坪、建物の面積は20坪ちょっとで370万円という物件です。
阿部 それは土地代ふくむ?
林 ほぼ土地代です。建物の価値はほぼ0なので。
尾内 ほぼほぼ、そのエリアの平均値の価格。だからすごい安いわけではないようなんです。ただ、いつか自分たちでリノベーションして家をつくりたいという話は林さんとなんとなくしたことはあったので、考えてもいいんじゃないかという気持ちにはなりました。林の意見としては「津波」の問題が気になると言っていますが。
阿部 それは浜松人みんな納得する意見ですね。
尾内 とはいえ、その物件を見学することで改めて自分は、自分たちは、どんな家に住みたいのか考えられるようになりました。
阿部 ちなみに海とか近いんですか?
尾内 近いですね。
林 海の音が聴こえます。
阿部 海が近いと車もエアコンの室外機もさびるし、環境はいいけど、維持費が大変そうですね。
尾内 海の近くに住んだことがないから想像を絶しますね。
林 元群馬県民だから。
阿部 洗濯物がべとべとだっ!てなりますよ。
尾内 あ、それはダメですね。室内乾燥機買わないと。まあ、そんなことで少しずつ住まいについて本腰入れて考えようかということになりました。
阿部 そうやって話して、家見て、また家族で話し合ってというようにして、だんだんビジョンが出て来ますよね。でも、時間がかかるものなんですよね。実際買うってなってからも。
尾内 そうですよね。すぐ見つかるもんじゃないですよね。
阿部 土地買うにも自分にちょうどいい土地が出てくるまで待たないといけない。土地ってけっこういいところは出るとすぐ売れるんで。タイミングなんですよ。
林 じゃあ、まず家を買おうと思ったら土地を探すところから始めるんですか?
阿部 土地から探しますね。そうするとやっぱり浜松は地震が多いから地盤が固いところ、津波が来ないところ…と、自然災害を想定した選び方になりますね。
林 究極、日本じゃ暮らせませんね。
阿部 脱出するしか。笑
尾内 私は2011年の東日本大震災のとき東京にいたので、結構な揺れを経験しました。東北の被災地の取材もしたことがあったので、そのときに持ち家を取得するなんて夢は幻想だったんだという意識になりましたね。なので、この収録の前に阿部さんが「こういう家に住みたい」と言っていて、理想の住まいをイメージできること自体がすごく新鮮で羨ましいと思いました。私は、家に憧れを抱けなくなっていたことに気づかされたんです。
今でももしも地震があったら、傾いたり流されたりすることを考えて、人間って借り暮らしをしているんだって思ってた方が楽だな、と考えています。
阿部 人間って借り暮らしって本当にそう。一時的に住まわせてもらっているんですよね。
林 なんか仏教的な話になりましたね。「本来無一物」みたいな。
つづく
次回は3月10日更新予定です。