びおNEWS

2月4日より連載開始!

来たる2月4日(立春)よりノンフィクション大賞(『ユージン・スミス水俣に捧げた写真家の1100日』にて受賞)に輝く「旅する作家」山口由美が、「住まいマガジンびお」にて長編連載を開始します。乞うご期待!!

(本文冒頭)箱根の山肌に低い雲が立ちこめて霧になる。緑色の屋根に赤い欄干をめぐらせた壮麗な寺社建築が、乳白色の霧の中から、山間に降り立った竜宮城のごとく立ち上がる。日本であって、日本そのものではなく、それでいて、どこよりも日本を強く感じさせる。喩えるならば、外国人が夢の中で描いた日本。しかし、見当違いな東洋風にふれていないのは、創った者たちが、まぎれもない日本人だったからだ。 日本しか知らない日本人にも、日本を知らない外国人にも、その世界観は創り出せなかったに違いない。それが、富士屋ホテルだった。

著者 山口由美

1962年神奈川県箱根町生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。海外旅行 とホテルの業界誌紙のフリーランス記者を経て作家活動に入る。主な著書に『アマン伝説 創業者エイドリアンゼッカとリゾート革命』『日本旅館進化論 星野リゾートと挑戦者たち』『熱帯建築家 ジェフリー・バワの冒険』など。

[著者 山口由美からのメッセージ]
思えば、物書きになりたいと思った原点が、出自である富士屋ホテルの存在だったのかもしれません。高校生の頃、母の従姉妹にあたる作家の曽野綾子に、このテーマは書かないでほしいと懇願した過去を恥ずかしく思い出します。彼女自身の処女作『遠来の客たち』の舞台もまた、富士屋ホテルでした。
そして最初の単行本『箱根富士屋ホテル物語』が生まれたのですが、本当に自分が書きたいものはまだ完成していない、という想いを長年もってきました。
小説は2000年代前半に何編か商業誌に発表したことはありますが、久々の挑戦になります。いろいろと熟考しましたが、ノンフィクションノベルというかたちが、最もふさわしいスタイルだと思うに至りました。物語の種は無限にある題材です。長い連載になるかもしれません。
おつきあい頂ければ幸いです。

挿絵 しゅんしゅん

素描家。1978年高知生まれ、東京育ち。大学で建築を学び、建築設計の仕事を経て、絵の道へ。単色のボールペンで繊細なドローイングを描く。書籍・広告のイラス
トレーションのほか、全国各地で個展も開催。主な仕事に「ツバキ文具店」(小川糸 著)、「とらやを巡る小さなお話(web)」(虎屋)など。

[挿絵 しゅんしゅんからのメッセージ]
奇しくも、富士屋ホテルに駆けつけた2018年3月31日の夜は、満月でした。翌日4月1日から2020年夏まで、耐震補強・改修工事で休館になるため、その夕刻は、特別、感慨深い気配で満ちていました。著者である山口由美さんが直々に館内を案内してくださいました。代々の経営者である山口仙之助、正造、堅吉から現在までの、富士屋ホテルの歴史と、建築群の変遷や装飾の小話を見聞しているうちに、このホテルがまるで、一つの生き物のように感じられてきました。『ジャパネスク 富士屋ホテル物語』の、挿絵を担当させていただけるという、貴重な機会と、ご縁に感謝いたします。激動の時代を駆け抜ける、クラシックホテルのドラマに、臨場感を与えられるよう、全力で描いていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

小説長期連載開始 山口由美 ジャパネクス富士屋ホテル物語
小説長期連載開始 山口由美 ジャパネクス富士屋ホテル物語