色彩のフィールドワーク:もてなす緑

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人目を誘う緑––和菓子店の店先にて

初めまして、加藤幸枝です。色彩計画家という職業は耳にしたことが無い方が多いかと思いますが、都市やまち・建築の内外装の色彩(や素材の選定)をデザインしたり設計したり、色選びに困っている人たち(主に行政)にアドヴァイスをしたりする仕事を生業としています。

仕事柄、まちを歩くと気になるのはやはり様々な「色彩」です。色は個々に善し悪しが存在するわけではなく、組み合わされ色同士が何らかの関係性がつくりだされている状態が様々な意味や効果をもたらすのだと考えています。

近年では、屋外広告物の色彩が抱える課題や今後の可能性について関わる機会が増えてきました。目立つことを第一に考えられてきた配色やデザインが、繁華街の賑わいをつくっている例も多くある一方、自然豊かな環境や閑静な住宅地、あるいは歴史あるまちなみの中で違和感を与えている例も少なくありません。

 

和菓子店の店先

このコラムのきっかけとなった、和菓子店の店先。1本の木がまるでお辞儀をしているように見えました。

 

さまざまな看板を気にして歩いているうち、自身が「ああ、良い雰囲気だな、ちょっと入ってみたいな」と思う店舗の店先には、必ず「緑」があることに気が付きました。1本の木がまさに看板のように道行く人を見守っていたり、旅先で見かけた一鉢のアジサイが季節の変化を印象的に感じさせてくれたり。文字やイラストなどの情報が無くとも、充分に「目立ち」お客様を「出迎える」効果が発揮されている、と感じるようになりました。

緑はまた、自然素材やそれに近い色調を使用した建築外装や外構(舗装など)に使用されている素材との相性が良いということも、受け入れやすい要因なのかもしれないと考えています。

 

外壁

外壁の素材は大谷石。わずかに緑味のある色調が、明るい葉色と馴染んでいます。

 

測色の様子

測色の様子。Y(イエロー)系とGY(グリーンイエロー)系が混在しています。

 

このコラムでは、自身がまちを歩いていて気になった店先の緑をテーマに、実際に色を測ったり、外壁や外構との素材の相性を考えたりしながら、綴って参りたいと思います。どうぞ宜しくお願い致します。

ウエルカム感   ★★★★
ボリューム感   ★★★
全体のカラフル感 ★

※ごく個人的な判定ですが、この3つの指標に記録をして行きます。必ずしも★が多いことが良いという訳ではなく、シンプルでもカラフル度が高くて楽しいなど、演出のポイントや効果の発見に繋がると面白いなと考えています。

著者について

加藤幸枝

加藤幸枝かとう・ゆきえ
色彩計画家
1968年生まれ。カラープランニングコーポレーションクリマ・取締役。武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒後、クリマ入社。トータルな色彩調和の取れた空間・環境づくりを目標に、建築の内外装を始め、ランドスケープ・土木・照明デザインをつなぐ環境色彩デザインを専門としている。自著「色彩の手帳-50のヒント」ニューショップ浜松にて販売中。

連載について

色彩計画家の加藤幸枝さんが綴る、「まちの緑」に着目したフィールドノートです。加藤さんは、店先の緑は看板より人の心を動かすうえで効果的であると言います。店先にプランターを置いたり、外装を植物で覆ったりするなど、店と歩道や道路との間で、緑を生かした空間づくりが少しずつ目立つようになっているそうです。それは、街ゆく人と店とのコミュニケーションの架け橋になっているとも言えるかもしれません。加藤さんがふだんの生活の中から見つける緑のあり方から、まちへ開く住まいづくりのヒントが見つかるでしょう。